人材を「問題を起こす脅威」にする危険なワード

――だからこそ、マネジメントを学ぶことが大事なんですね

サラタメ:そうなんです。そのうえでドラッカーは、人を動かすためにとにかく重要なのは「生産的な仕事にする」ことだ、と説いています。

 よりかみ砕いていえば、部下に「この仕事は重要だ」と思い込ませられるかどうか。

 どんなに地味で目立たない仕事であっても「この仕事には価値がある」と思ってもらうこと。

 これが、優秀なマネジャーとそうでないマネジャーを分ける決定的な差になるのです。

 たとえば、ひたすらExcelにデータを入力するとか資料をコピーするとか、そんな雑用ばかり任されていると、「この仕事、やる意味あるのかな?」と思っちゃったりするでしょう?「意味のない仕事をしている」と思いながら働くのって相当なストレスですよね。

――たしかに、「やってもやらなくても同じじゃん」と思ってしまうこと、あります。
 一時期だけなら耐えられるかもしれませんが、ずっと続くとやる気もなくなりますよね

サラタメ:そうそう。「価値のない仕事しか任せてもらえない自分」に対して、自信もなくなっていくじゃないですか。

 だから、

「とにかく、やれ」
「いいから、やれ」

 などの言葉は、マネジメントする側の上司が絶対に言ってはいけないNGワード

 管理職は忙しいので、どうしても説明の手間を省いてしまいがちですが、そこを省略すると、部下のやる気はどんどんなくなっていきます。

 本来なら「大事な資産」になるかもしれなかった人材が、その少しの手間を惜しむことで「問題を起こす脅威」になってしまうこともある。

 結果的に自分の首を絞めることにならないように、「生産的な仕事と感じてもらう」というのは常に意識できるといいですよね。

「リモートが当たり前」の時代にこそ“電話”にこだわる理由

――サラタメさんも、「いいからやれ」と言われたことはありましたか?

サラタメ:まだ社会人としてのキャリアが浅い頃、そういうタイプの上司のもとで働いたことはありましたね。

 マーケティング関係の仕事をしていたのですが、背景の説明などが本当にないタイプの人でした。

 たとえば、「今年中にAという施策をやれ」と指示をされたとする。

 それで、こちらが「Aという施策をやるのは、Bという目的を達成するためですよね。

 でしたら、こういった案のほうが売上と利益につながりやすいと思うのですが」と提案しても、「いいから、黙ってやっといて」「もう決まったことだから」と取り合ってもらえなくて。

――あるあるですね。でも、つい面倒くさくて、説明を省きたくなる気持ちもわかります。マネジャー側も、「いろいろ考えたうえで決断したんだから、それくらい察してくれ」というときもあるんでしょうね。

サラタメ:そうなんですよ。でも、それって伝わらないと意味がない。

 だから私は、チームで協力しながら仕事をするときは、ドラッカーの「人は弱い。悲しいほどに弱い」という言葉を思い出し、せめて「最終的にどんなゴールを目指しているか」という話だけは共有するようにしています。

 全体像を一から十まで説明するのが難しくても、「この仕事はこういうゴールのために進んでいて、その一部をあなたに依頼している。だからあなたには、こういう価値を生んでほしい」といったことは、最低限説明しておきたいなと。

――忙しくてあまり時間をかけられない! という人もいると思いますが、おすすめの伝達手段はありますか?

サラタメ:今の時代の流れに逆行するようですが、私が一番よく使うのは電話です。

 リモートワーク中でも、私は頻繁に電話をします。

「ちょっとこの部分、テキストだけで伝える自信がないので、お手隙の際に3分だけ電話してもいいですか?」

 などというように。

 メッセージだと重要性や温度感が伝わらない可能性もありますし、がんばってテキストを打つより、口頭のほうが時間短縮になることがほとんどなので。

 管理職になればなるほど板挟みで仕事も大変になり、苦労する人も多いはず。

 でも、ちょっとした工夫で人は動きやすくなるので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。

(本原稿は、話題沸騰のサラタメ著『真の「安定」を手に入れる シン・サラリーマン──名著300冊から導き出した人生100年時代の攻略法』の内容をもとに、新たに著者がインタビューを受けたものです)

真の「安定」を手に入れる シン・サラリーマン』には、転職や副業に関する具体的なノウハウがこれでもかと書かれています。ぜひチェックしてみてください。