中国は「中国製ワクチンは効かない」と
認識している
もう一つは、接種した中国製ワクチンが特にオミクロン株への効果がないと認識している点だ。
昨年12月14日、香港大学は、中国シノバック製ワクチンを2回接種してもオミクロン株を中和する抗体は確認できなかったと発表した。要するに、ワクチン効果なしと中国国内であるはずの香港が発表したのだ。
シノバックは、すぐにこの発表を打ち消す発表を出している。香港大学の発表は当然、中国本土ではブロックされ、シノバックの発表のみが報じられた。
Our World in Data によると、中国はワクチン接種を2回終えた人が87.05%で世界最高レベル。3回目の追加接種を終えた人は54.01%(いずれも6月18日時点)となっている。
6月現在、中国国内でワクチン接種はどうなっているのか、複数の都市在住者に取材すると、新型コロナ対策優先を理由に接種を呼び掛けられてはいない。最近は、接種したという話は周りで聞かないという状況だ。
継続的に接種率をウオッチしているが、9月現在もほぼ横ばいとなっており、事実上、中国では接種が止まっている。
中国国営の新華社通信は5月4日、シノファームがオミクロン株に対応した不活化ワクチンを開発。接種へ向けた治験を開始したと報じている。
中国政府は、現状の中国製ワクチンではまったく効果がないとよく認識しているとみられる。だから、隔離とロックダウン一辺倒のゼロコロナ政策となるわけだ。
中国の医療体制が乏しいことも
背景の一つ
もちろん、中国の乏しい医療ソースを守るという背景もある。
5月、上海のロックダウン中に在留邦人2人が自宅で亡くなったことが明らかになった。中国政府は詳しい死因は発表しないと公表した。
抱えていた持病が悪化して病死した可能性がある。なにせ、中国でロックダウンされると、日本人が通院する医療機関も含む約95%が強制休業となるからだ。
4月末までロックダウンしていた遼寧省瀋陽の医療関係者へ休業理由を聞くと、「PCR検査ができないから」だそうだ。
中国は、病床数、医師・看護師の人数など、規模に応じて病院と非病院に分類される。さらに、病院は上から3級~1級までの3種類がある。非病院には、眼科や歯科など専門の医療機関や日本人などが診てもらう海外旅行保険に対応した診療所や、日本語ではクリニックと訳される医療機関がある。
中国は、非病院が全医療機関の95%を占め、ロックダウンされるとすべての非病院が強制休業となる。
上海では自殺者も多く出たが、当然、公表されていない。あくまで、新型コロナウイルスで亡くなる人を減らすことをアピールすることで、「大切な国民の生命を守った」と内政利用するだけだからだ。
(筑前サンミゲル/5時から作家塾®)