ユグノーを殺害する
フランスのローマ教会派の貴族への深い疑問
ほぼ時を同じくして、フランスではユグノー戦争が起きました(1562-1598)。
これは、ローマ教会派とユグノーと呼ばれたカルヴァン派によって争われた宗教的な内乱です。
カルヴァン派については本書で詳しく述べますが、多くの犠牲者が出たユグノー戦争は、ちょうどモンテーニュの人生の後半と重なっていました。
モンテーニュは、南米大陸でキリスト教の布教という大義名分を隠れ蓑に、原地人を酷使し虐待するスペインや、ローマ教会を批判することを理由にユグノーを殺害するフランスのローマ教会派の貴族に、深い疑問を感じたようです。
そして自分自身の経験やギリシャ・ローマの古典から学んだことを中心に、人々に寛容の精神を訴え続けたのでした。
モンテーニュが生涯をかけて書いた『エセー』
その著書である『エセー』(宮下志朗訳、白水社、全7巻)は、死亡する直前まで書き続けられました。
この本は、今でも全世界で読み継がれています。
僕も大好きです。
聖書からの引用がギリシャ・ローマの古典に比べて少ないことが特徴的です。
モンテーニュが神の正義に対し、人間を許すことの大切さを説いた寛容の精神に思いが至ったのも、ルネサンスによる人間性の復権が深く関係していたと考えられます。
『哲学と宗教全史』では、哲学者、宗教家が熱く生きた3000年を、出没年付きカラー人物相関図・系図で紹介しました。
僕は系図が大好きなので、「対立」「友人」などの人間関係マップも盛り込んでみたのでぜひご覧いただけたらと思います。
(本原稿は、15万部突破のベストセラー、出口治明著『哲学と宗教全史』からの抜粋です)
『哲学と宗教全史』には3000年の本物の教養が一冊凝縮されています。ぜひチェックしてみてください。