デジタル競争の第1回戦はGAFAに惨敗
第2回戦は日本にも勝機あり

入山先生

入山 前回のお話のように、System of Systemsが当たり前になってくると、非常に大きな社会変化が起きてくるわけですね。

 実は僕も「サイバー×フィジカル」が、世界におけるデジタル競争の第2回戦だと、よく言っているんです。

 第1回戦は、日本はGAFAに惨敗しました。どこで負けたかというと、パソコンやスマホといったデバイス内に新しくできた、ホワイトスペースです。第1回戦の「デバイス内のバーチャル空間の戦い」では負けた。

 そして、第2回戦の舞台は、まさに「サイバー×フィジカル」です。世の中のありとあらゆるものがネットにつながっていくIoTの時代であり、このような局面では、「もの」が強くないとどうしようもありませんよね。

 もちろん中国も台頭してきていますが、世界屈指のものづくり大国といえば日本とドイツです。ドイツのインダストリー4.0は、完全にそれを狙っていますよね。日本でも、東芝は、ITに強い島田太郎さんが社長に就任しましたが、まさに「サイバー×フィジカル」を視野に入れているのだと思います。ものづくり企業にこそ、チャンスがあるんですよね 。

白坂 おっしゃる通りで、やはり「つながる社会」というのは、今までは、何となくインターネットにつながって終わってましたが、ハードも含めてつながっていくとなると、私たちの生活に密着するものにダイレクトに関係してくる。

 そこをうまく適合させようとすると、相当大きなレベルで変わらなくてはならないはずです。でも、変わらなくてはいけないということは、チャンスでもあるんですね。

 東芝の島田社長は、ずっと、System of Systemsのようなところに着目していて、これからはかなりの期間、そこが勝ち筋になる、そこにチャンスがあると、力を入れていらっしゃいます。

入山 一方で、それをやるには、1社だけというより、競争はあるけれど「全体のシステムをどうやってつくっていくか」という協調が、ものすごく重要になってくると思います。日本だけでなく、世界中で行ったほうが良いのですが、第2回戦を制すには、これを日本が音頭を取ってやっていかなくてはならないわけですよね。

白坂 そう思います。その際に、今まで私たちも、通常のビジネスにとらわれすぎて、「シェアを取るんだ」という発想でした。でも、これからの「つながる社会」においては、多分、10万人のターゲットのシェアを100%取るよりも、仲間として協調して100万人のキャパシティにして 20%取ったほうがいいわけです。

「プラットフォーマーが独占」と言っていたのを、プラットフォームを協調化し、協調領域を共に広げていく。その中でみんなでパイをシェアしながら、みんなで社会を変えていくような方向へと持っていく。このほうが恐らく、やりやすいと思いますし、日本は今までも、さまざまな産業でそういうことを実際にやってきているので、強みもある。音頭を取っていけるのではと、期待しているんです。

入山 白坂先生にこれからの社会がどうなるかの話をしていただいて、すごくインスパイアされました。僕は経営学者なので、経営学的な企業や組織という目線で、これからお話をさせてください。

近日公開の対談第3回もぜひご覧ください。