中国の住宅事情は、つぎの2つの要因によって、きわめて特殊なものになっている。

 第1は、社会主義経済時代には、住宅の私有が認められていなかったことだ。

 第2は、急速な経済成長による購買力の上昇と、農村人口の都市への流入によって膨大な需要増が生じたことだ。

中国における住宅制度の歴史

 1978年の改革・開放以前の中国では、住宅の建設は国の事業であり、住宅は、福祉施策の一環として分配された。この制度は、「福利分房」と呼ばれる。したがって、中国に不動産市場はまったく存在しなかったわけだ。

 1988年の憲法改正によって、国が土地使用権を民間に譲渡できるようになり、土地利用は、無償・無期使用から有償・有期使用へと変わることとなった。こうして、70年経過後は建物付で国に返還する「70年定期借地権のマンション」が分譲可能になり、不動産市場が発展を遂げた。1998年、数十年間にわたって実施されてきた「福利分房」制度が終わり、「貨幣分房」が実施されることになった。

 購買力の上昇や都市人口の増加によって、2002年以降、中国の不動産価格は高騰した。高額所得者は、投機目的で不動産を購入するようになった。住宅価格の労働者年間所得比は、多くの国で3~5倍だが、中国では10~20倍になったと言われる(ただし、後で見るように、公式統計による数値で計算すると、そこまで行っていない)。

 住宅ローン制度も整っている。自己資金が20~30%あれば、残額は25~30年ローンで賄える。