「数字は人格」といわれ、成績優秀者が見る見る栄達し、ノルマ未達者には苛烈過ぎる叱責が待っていた証券業界にも変化の波が。特集『野村VSメガバンク 市場大乱の死闘』(全7回)の#2では、ボーナスに連動する評価基準も含めて、「カネ」と「出世」の最新状況を大手3社の関係者に調査した。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
激変する「ナイスガイ」の評価基準
「顧客本位」への営業員の誘導の肝は?
「彼は、ナイスガイだ」――。きょうびあまり耳にしない表現だが、証券業界でもとりわけ最大手の野村證券では、男性の同僚をたたえて、こう呼ぶことが多い。
かつては証券業界でも特に厳しいノルマを個人顧客の営業員に課してきた野村。過酷な環境に耐えて高い成果を上げつつも、平常心を失わず、部下や後輩を思いやる。そんな度量を持った人物が「ナイスガイ」と呼び慕われてきた。
だが、若者の意識や働き方に対する人々の考え方の変化、そして金融庁が求める「顧客本位の業務運営」の実現のため、証券業界の個人営業部門では一大変革が進んでいる。
女性の活躍も目覚ましく「ナイスガイ」という表現はいずれ廃れるかもしれないが、同じように、周囲の称賛と高額のボーナスを目指す営業員たちの評価基準も当然、変化の真っただ中だ。
従来のように顧客の利益と無関係に金融商品を売買する手法は遠ざけられ、顧客資産の増減に応じて手数料を得るビジネスにシフトするよう方向づけられている。
一般的に彼ら営業員のボーナスや出世の基準は、実現した「数字」で決まる。そこでどの「数字」を重視するのかが会社の方針転換によって変わりつつあるのだ。
証券営業員たちの「カネ」と「出世」はどのように変化しているのか。野村、大和証券、そしてかつて四大証券の一角を占めたSMBC日興証券の複数の関係者に聞き取り調査を行った。次ページ以降でお見せしよう。