野村VSメガバンク 市場大乱の死闘#7

金融緩和が終幕を迎え、インフレが襲う世界経済。株式、債券、M&Aアドバイザリーだけでなく、プライベート市場や環境対応など未知の領域に踏み出す野村ホールディングスの戦略に込めた狙いは?特集『野村VSメガバンク 市場大乱の死闘』(全7回)の最終回では、10月1日付でデジタル資産を扱う子会社のチェアマンに転じるホールセール部門長のスティーブン・アシュレー氏に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

インフレは今後も続くと予想
市場乱調でも債券部門が支えになった

――米国ではインフレが続いており、年明け以降の利上げやウクライナ危機で金融市場の不安定な状態が続いています。今後の見通しと、それが野村ホールディングス(HD)の業績に与える影響についてどう考えていますか。

 世界的なインフレ傾向は今後も続くでしょう。

 ウクライナでの戦争が続いていること、中国が「ゼロコロナ政策」を続けていることによる供給制約、化石燃料と再生可能エネルギーとのせめぎ合い、そして世界各地の製造業の国境を越えた移転と雇用の拡大が続いていること、この四つの要因からのインフレ圧力が、今後も高止まりし続けるだろうとみています。

 そうした中で野村はホールセール部門において、ビジネスの多様化を図ってきました。特にフィクスト・インカム(債券関連のセールスやトレーディング)は2023年3月期第1四半期の純営業収益が前年同期比27.8%増の1126億円と力強い業績を上げましたが、この傾向は通期で続くと考えています。

野村HDの23年3月期第1四半期のホールセール部門全体の純営業収益は1990億円、税引き前利益は253億円と、年明け以降のマーケットの乱調の中で健闘している。それをけん引したのは、アシュレー氏の言う通り、フィクスト・インカム部門だ。

一方で米国のインフレは止まらず、景気後退を懸念する見方は強い。プライベート市場や環境関連、デジタル資産など未知の領域へとビジネスを拡大しつつ、野村HDは稼ぎ続けられるのか。また、そこにリスクはないのか。アシュレー氏に秘策を聞いた。