大阪府の興國高等学校サッカー部には、プロを目指す若き才能が数多く集まる。興國高校の体育教師にしてサッカー部監督を務めるのは、自身も強豪高校で活躍した内野智章氏(初芝橋本で全国選手権ベスト4)。2006年、監督に就任すると、同校を「関西のバルセロナ」と呼ばれるほどの強豪校に成長させた。また日本代表選手・古橋亨梧を始め、この10年間で30人以上のプロ選手を輩出(Jリーガーは27人)。サッカーの技術だけでなく、高校生が高校生らしく、本来持ち合わせているべき感覚を尊重する指導法が特徴だ。今回は、サッカーを通じて選手にライフスキルを身に付けさせる指導ポリシーについて、内野監督に聞いた。(取材・文・撮影/編集者・メディアプロデューサー 上沼祐樹)
トップダウンからボトムアップへと
移りつつあるサッカーの指導法
社会に出て活躍して、それなりの地位に立っている人を見渡したときに、我々世代だとラグビー部出身者が多いんですよね。あくまで私見ですが、サッカーや野球経験者よりも多い。もちろん慶応・早稲田という名門校がラグビーの強豪校であることが影響しているのですが、その競技性にも理由があるのではと思いました。
彼らはグラウンドに入ったら監督がいません。スタンドに座る監督は、一挙手一投足に指示を出してはくれませんので、選手らは自分たちで判断し、行動しなくちゃいけない。ボトムアップ式で試合に挑まないといけない構造なんですよね。
野球だと常に監督の采配を意識しないといけないので、どうしてもトップダウン式になりやすい。サッカーもトップダウンが主である時代が長かったですが、少し雰囲気が変わりつつあります。トップダウンだとチームの結果は残せますが、選手が主体的に考えて動く機会を奪ってしまいます。考えるのはベンチ(監督)になりがちですから。