孤高の天才が
成果を残せた理由
では、絶対悲観主義者になると、具体的にはどのようなメリットが得られるのだろうか。
「たとえば、うまくいくはずがないと絶対悲観で構えておくと、結果的に大きな成果が得られたときに喜びはひとしお。また、どうせうまくいかないと考えているので、失敗するリスクに対してもオープンに構えて挑戦できるのです。その結果、リスクの耐性が高まるだけでなく、実際に失敗した場合にも精神的なダメージを受けずに淡々と仕事を続けられます」
「悲観から楽観が生まれる」と楠木氏が言うように、思考のベースを絶対悲観にしておくだけで、多くの利点があるようだ。
また、結果を出すことを求められ続けるトップアスリートの世界でも、『絶対悲観主義』とさほど違いのない考えを持つ人がいる、とのこと。
「広島カープの大打者だった前田智徳氏は、代打として活躍されていたときに『俺が代打で対戦するピッチャーが誰か分かっているのか。(阪神の守護神の)藤川球児だぞ。たった1打席で火の玉ストレートを打てるわけがない』と割り切って、フォアボール狙いだったそう。アスリートの世界にも、絶対悲観主義に近い考えを持つ人がいることを知りました」
「孤高の天才」と呼ばれた前田氏も、「打てるわけがない」と思って打席に入っていたことがあったとは驚きだ。代打での出場が多くなった2010年以降も出塁率が非常に高かったのは、彼の絶対悲観的なスタンスが関係していたのかもしれない。