洋上風力Photo by Ryo Horiuchi

三菱商事が政府の洋上風力発電プロジェクト第1弾コンペで見せた「価格破壊」は、エネルギー業界を震撼(しんかん)させた。その価格破壊の“秘策”が、ダイヤモンド編集部の取材で判明した。政府による第2弾コンペが年内にも実施予定だが、「商事つぶし」の動きが水面化で活発化している。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

洋上風力価格破壊の
張本人が明かした“秘策”とは

 4月28日、都内で開催された日本風力発電協会主催のメディア向け勉強会に三菱商事エナジーソリューションズの岩崎芳博社長の姿があった。欧州と日本の洋上風力発電産業の展望について講演するためだ。

 三菱商事は政府の洋上風力発電プロジェクト第1弾コンペで、ライバルを寄せ付けない圧倒的な価格破壊によって、秋田県と千葉県の計3エリアを「総取り」した(『三菱商事が洋上風力発電の政府コンペ「総取り」、業界の成長に漂う不安』)。岩崎社長はこれを陣頭指揮した張本人だ。

 電力・ガス業界の通期決算発表が集中した日にもかかわらず、岩崎社長を“直撃”すべくメディア関係者ら20人近くが勉強会に詰めかけた。

 岩崎社長には「こんな安値でファイナンスが付くのか」「(三菱商事の総取りで)洋上風力発電産業が育たなくなる」「事業の実現性は本当にあるのか」とメディアから疑問の声が次々と飛んだ。

 その度に岩崎社長は、「バラバラよりも一括で発注する方が、(部品を供給する)海外メーカーに日本が(洋上風力の)魅力ある市場だと示すことができる」「国内や地域のサプライチェーンを構築する」などと反論した。

 では、一体どんな手段を駆使したのか。岩崎社長はダイヤモンド編集部の直撃取材に対し、ベールに包まれた価格破壊の“秘策”を明かしたのだ。

 次ページからは、三菱商事の洋上風力「価格破壊」の“秘策”をつまびらかにする。