反省ある毎日を送る

 人生では、心を高めていこうとしても、言うは易く行なうは難しで、実践することはけっして簡単ではありません。

 悲しいかな、人間とはいくら善いことを思い、善いことを行なおうと思っても、ついつい至らぬことをしてしまうものです。よほどの聖人君子でなければ、善い考え、善い行ないを貫けるものではありません。

 それは、かく言う私も同様です。

 ともすれば悪い心にとらわれがちな自分を戒めるために、私はいつのころからか、一つの自戒の儀式を自分に課しています。

 おごり高ぶり、慢心、そういう悪い思いが、自分の中で頭をもたげてきたときには、すぐに反省の機会を持つように、若いころから努めているのです。

 たとえば、少しいばったようなことや、調子のいいことを言ってしまったとき、また自分の努力が足らなかったときなどには、夜遅くホテルや家に帰ってから、あるいは翌朝目覚めてから、洗面所の鏡に向かい、

「バカモンが」

 と、自分を厳しく叱りつけるのです。すると続いて、

「神様、ごめんなさい」

 という反省の言葉が口をついて出てきてしまうのです。

 こうやって自省自戒をして、明日からはまた謙虚な姿勢で、やり直そうと心に言い聞かせる。そういう習慣がいつのまにか身についてしまっているのです。この習慣が、軌道修正の役割を果たし、私の人生は今まで、大きく逸脱することはなかったのです。

 大事なことは、善きことを思い、善きことをしようと努めながらも、もし悪いことを思い、悪いことをしてしまったなら、謙虚に反省をすることです。反省することでこそ、人は少しずつでも向上することができるのです。

 今日、自分がやったことを素直に反省し、明日からやり直そうと心に誓う。そんな反省のある毎日を送ってこそ、私たちは仕事において失敗を回避できるだけでなく、人生において心を高めていくことができるのです。

(1章 終わり)