収益構造の変化がプラットフォームの垣根を低くする

 もちろん、マイクロソフトもサティア・ナデラCEOの時代となってからはWindows中心の会社ではなく、クラウドサービスを核としたソリューション企業へと変貌してきた。それに伴ってクロスプラットフォーム戦略にも積極的に取り組んでおり、例えば身近な例としては、コラボレーションプラットフォームのTeamsは、Windowsのみならず、macOS、Linux、iOS、およびAndroid向けに提供されている。Windows 11でAndroidアプリをサポートしたり、発表されたばかりのメタのハイエンドVRヘッドセットであるMeta Quest Proに対してTeamsやOffice、Windows環境、あるいはXboxのゲームまで提供しようとしたりしているのも、クロスプラットフォーム戦略の一環だ。

 特にTeamsやクラウド環境のAzureを常用している企業ユーザーにとっては、もはや「マイクロソフト=Windowsの会社」という認識は希薄だろう。それでも一般消費者の多くにとって、少なくともここしばらくマイクロソフトとWindowsは切り離せない存在であり、マイクロソフトとしては自社の先進性をWindowsのアップデートに結びつけてアピールしておくことが、ブランディングの観点からも求められる。

 かつてIBMがPC事業から撤退してシステムインテグレーションなどの分野に注力したことで、それを支える要素としてiPhoneやMacも積極的に自社内に導入し、顧客に対しても採用を促すようになった。同様に、収益構造の変化が、マイクロソフトにとってもアップルにとってもプラットフォームの垣根を取り払わないまでも確実に低くし、協調路線を歩む動機の根幹にあるといえる。しかし、その裏では単純なWin・Win的な関係ではなく、依然として自社の利益を最大化しようとする思惑が見え隠れしている。

 いずれにしても、iCloudフォトやApple Music、Apple TVアプリがWindows環境でも利用できるようになるのはWindowsユーザーにとっては歓迎すべきことといえる。Windows 11にアップデートしても、あるいはMac環境に乗り換えるにしても、より優れたユーザー体験を得られるようになることは間違いないのである。