会社や社会の中で競争しながら躍起になって生きてきて、果たして本当に成功したのだろうか?
2000年代のマイクロソフトは社内競争が大変厳しく、ライバルは同僚だった。
しかしその間に、Googleやアマゾンが革新的なサービスを生み出して急成長を遂げ、マイクロソフトは長期不振に陥ってしまう。
そのようななか、南インド出身のサティア・ナデラ氏をCEOに迎え、マイクロソフトは全面的な組織改革をおこなった。
「顧客が抱えている真の問題点を解決するために、幅広くパートナーと協調することが、われわれの義務だ」とし、かつての社内競争ではなく協調・貢献の精神を貫く企業文化を形成し、時価総額1位を奪還。復活を遂げる。
もはや、一人で成功する時代は終わった。これからは競争よりも助け合いの時代なのだ。
現在、マイクロソフトでアジアリージョンマネージャーとして活躍する著者が、「他人の成功にどれだけ力になることができるか」を軸に、仕事と人生をよりよくするコツを伝授する。

パートナーシップPhoto: Adobe Stock

デジタル変革時代にもっとも必要な力
「パートナーシップ」

世界中を震撼させたコロナウイルス―。

日本のみなさんもつらい思いをされたことと思います。そんなガラリと様相を変えた日常にあっても、成長を目指して孤軍奮闘してきたみなさんに、「大変でしたね、お疲れさまです」といったねぎらいの言葉を送りたいです。

私たちは本当に頑張ってきました。

かつてないパンデミックの状況に適応すべく、世界中で、それまで発展させてきたデジタル技術を急速に常用化させました。

リモートでの学習や就業を強いられた子どもたちや会社員のみならず、ショッピングを始めこれまで楽しんできた日々の文化に至るまで、瞬く間にデジタルイノベーションが進みました。

初めのうちこそ右往左往していた人類も、こうしたデジタル転換に対し、少なくともはた目にはそこそこ適応できていたように見えました。

しかし、いくらリモート化でまかなえたとしても、デジタル転換に必要な文化やアイデンティティといった、目には見えない本質的な価値まで完璧に転換できたと言えるでしょうか? 単なる技術的変化を超えて、想像すらできなかったほどの成長を遂げながら、今以上に幸せな文化を築いていけるでしょうか?

激変する環境に振り回されることなく、
自分自身を強く持ちながら成長できる方法とは

デジタルイノベーション時代に沿った文化や成長法則とはどういうものなのか―。

著書『パートナーシップ』で詳しく述べたように、マイクロソフトは急速に革新するマーケットに適応できず、十数年に及んだ長期低迷に陥り、競合他社や消費者から相手にもされないという屈辱を味わいました。

そこに、サティア・ナデラというインドで生まれ育った平凡な開発者がCEO(現会長)に任命されて、デジタル変革時代に沿った文化へ大々的な改革に着手すると、再び息を吹き返し、長かった停滞期から脱出、時価総額1位の座に返り咲いたのです。

私はマイクロソフト本社に所属する社員であり、アジア各地域で活動するチームスタッフを管理する中間管理職であり、プライベートでは妻であり、2人の子どもの母親でもあります。

そんなIT業界一筋で、四半世紀を多国籍企業のデジタル世代たちとともに働く中で、デジタル時代における人間関係のあり方というものに、常々頭を悩ませてきました。

直接会って話すこともままならない、さまざまな文化背景や年代のスタッフたちに対し、励ましの言葉はどのようにかけるべきなのか、また、数千キロ離れた本社のリーダーたちとはどのように意思疎通し、仕事を進めていくべきなのか。

加えて、変化の著しいマーケット環境に振り回されることなく、プロとして自分自身を強く持ちながら成長できる方法とはどういうものなのか。

さらに、同じ国でありながら私とはまるで違う環境で生きていく子どもたちをどう育て、またパンデミックのような危機の中で子育てと仕事の両立をどのようにしていくべきなのかー。

こうした数えきれないほどの疑問と悩みの解決策として、私はマイクロソフトの復活劇から学んだ「パートナーシップの力」を身に染みて感じました。

そもそも「パートナーシップ」という単語自体、あまりにもありふれたものであり、私たちはこの言葉をよく知っているつもりになりがちです。

しかし、デジタル変革時代にもっとも必要な力をひとつ選べと言われたら、間違いなく私はこの「パートナーシップ」であると自信を持って答えたい。マイクロソフト、それから私自身の成長にとっても多大なる力となってくれたのが「パートナーシップ」だからです。

一人で成功する時代は終わったもはや一人で成功する時代は終わった。変化の時代においては、社内外の人々とともに成長するための「パートナーシップ」を身に付ける必要がある。
(記事をもとに編集部で作成)

コロナ禍での変化は、マイクロソフトが
数年前に直面していた状況と同じ

私が従事してきた約20年の間にも、マイクロソフトでは、変化著しいマーケットに対応していくため数々の構造改革がなされてきました。

その一環で部署やチームがなくなるのは日常茶飯事でした。そんな中で、私たちのチームが、韓国にいながらにして全世界に散らばるスタッフたちを率いるリモートワークを推進して数年になります。

コロナウイルスと第4次産業革命によって世界中で余儀なくされている状況とこれから経験することは、実はマイクロソフトが数年前にすでに直面していたことだったとも見ることができます。

全社員が
口にする「問い」とは?

マイクロソフトは、創業以来数十年間にわたり競争に勝つことのみを最重要課題としてきた企業文化を一変し、次のように問い始めたのです。

「あなたは、誰かの成功に貢献したことがあるか?」

この問いは、今でこそマイクロソフトの全社員が期末になれば必ず口にし、答えられるものです。

しかし当初は、それまで一度も考えたこともなかった質問でしたので、答えに窮したものでした。

そのような新たな企業文化の中で働くにつれ、不思議なことに私の内面にも数々の変化が訪れました。そしていかなる状況下でも、「パートナーシップ」の力の存在に気づき、本の執筆にまで至っています。

コロナ禍が急速に推し進めたDX(デジタル変革)の世界では、目新しいことが次々に展開しているという状況です。

私はこのあらゆる変化を、個人たった一人で耐え抜くことは至難の業であると感じています。

これから先、私たちが生き抜いていくためになくてはならないパートナーシップを、職場や職場外、そしてプライベートな領域でどのように築いていくべきなのかを、この連載を通じて、シェアしていこうと思います。

デジタルイノベーション時代に合ったパートナーシップの価値を理解し、実践方法を身に付ければ、新たな困難に直面したとしても、きっと堂々と立ち向かい、確かで幸せな成長を続けていけると信じています。

(本原稿は、イ・ソヨン著『パートナーシップ PARTNERSHIPーマイクロソフトを復活させたマネジメントの4原則』を編集・抜粋したものです)