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元フェイスブック幹部が手掛ける新しいSNS
質問サイト「Quora」で繰り広げられる“知恵の競演”

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第230回】 2013年1月30日
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 これに対してクウォラは「知恵を披露する場」というイメージが強い。世の中には物知りが多いもので、「iPhoneにできて、アンドロイドのスマートフォンにはできないことは何?」とか、「海洋開発の余地はまだまだあるのに、なぜ宇宙開発ばかりに向かうのか?」といったようなけっこう専門的な質問、「料理の腕を向上させるにはどうすればいいのか?」「25歳だけれど、給料はいいが退屈な企業での仕事を選ぶべきか、あるいは報酬は少ないが好きなことを追求した方がいいのか?」といった身近な質問に対して、それなりの思慮深い回答が寄せられる。

 中には、回答者がその分野の専門家という場合も多い。クウォラ自身がアピールするところでは、弁護士や医師、テクノロジー専門家らも多くユーザーにいるということである。したがって、疑問点も解決され、役にも立ち、それでいて普通の人にはないうんちくがあるといった回答が、ここでは期待できるのだ。

 もちろん、おもしろくエンターテイニングな質問もある。最近話題を呼んだのは、「スティーブ・ジョブズに偶然出会った時の、あなたの物語は何ですか?」というもの。最高の回答としてランクされたのは、ある男性がかつてジョブズ家の近所に住む女性とつき合っていた頃の話だ。

 彼はドライブする際に、よくジョブズの姿を見かけたそうだが、ある日あろうことか、ジョブズの家の前で古い車が故障して動かなくなってしまった。まずジョブズの奥さんが「ビールでもどう?」とビール瓶を2本持ってきてくれて、その後車に詳しい知人まで呼んでくれ、そこにジョブズも加わってドライバー席に座ってクラッチを操作したりした、という微笑ましい話だ。結局車は動かず、ジョブズは「どうしようもないボロ車だな」と言い捨てて家へ入って行き、けれども彼の家で電話を借りて、修理屋を呼んだ。ジョブズ一家は、メディアで言われているような有名人なだけでなく、とても人間的な人々だった、という物語である。

 また、上述した25歳の若者に対しては、「まずそんな質問が間違っている」と答えた回答者がランキングで上位に上がっている。その回答者によると、キャリアとはすっきりきれいに進むものではなくて、失敗や勘違いをしながらゴタゴタと進むもの。だから、究極的に自分は何をすべきかといったタイプの「大きな質問」の前にフリーズしてしまう代わりに、ともかくブログを書くなり、夜の時間を使ってできる小さなビジネスを始めてみるなり、何かを始めた方がいい、というアドバイスだ。

 ここで上位に上がる回答には、それなりの内容と価値があり、いい質問をするユーザーも注目される。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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