今年の冬はCOVID-19と季節性インフルエンザ(インフル)の同時感染に注意が必要だ。
一足先にインフルが流行した南半球でも、今シーズンの感染者数はCOVID-19以前の水準に戻った。また、オーストラリアの流行株の8割がA香港型だったことから、日本でも重症化しやすいA香港型が警戒されている。
COVID-19とインフルに同時感染すると、肺の損傷がひどく、入院リスクが上昇する。インフル単独感染でも、丸2年の空白期間で免疫がかなり落ちているため、油断はできない。最悪の場合、COVID-19患者とインフル患者の間で、救急車や集中治療室の奪い合いが起こりそうだ。
一方、軽症者も自分がCOVID-19かインフルかの区別が付かず、とりあえず治療薬と会社に提出する「陰性証明(治癒証明)」を求めて病院を受診し、感染源になる可能性がある。一般の診療所でもCOVID-19とインフルのダブルパンチで、クラスターが発生するかもしれないのだ。この際、ろくに確認もされず、ファイルにとじられるだけの証明書を強いる慣例はなくしてほしい。
インフルもCOVID-19も同じ経路で感染する呼吸器感染症であり、密集、密接、密閉の「3密」を避け、小まめな「手指洗い」と飛沫防止の「マスク着用」が自分と周囲を守ることに変わりはない。もう飽き飽きしているだろうが、COVID-19を何とか生き延びてきたのだから、あと少しの間は自制心を働かせたい。
インフルは子どもも重症化しやすい。日本小児科学会のインフル治療/予防指針によると、新生児~乳幼児、9歳までの小児への推奨薬は「タミフル」で、吸入動作ができる10歳以上は吸入薬の「リレンザ」と「イナビル」も推奨された。重症例には点滴薬の「ラピアクタ」が推奨される。
ただ吸入薬は使用時に咳き込む可能性があり、万が一のCOVID-19の同時感染を避ける意味で、使用中の患者に近づかない、家で補助する際はマスクを着け、手指消毒を徹底するなどの配慮が必要になりそうだ。
(取材・構成/医学ライター 井手ゆきえ)