みずほ信託銀行・梅田圭社長Photo by Kazutoshi Sumitomo

芝パークビルに電通本社ビル、大手町プレイス……。ここ数年、みずほ信託銀行は、売買価格が1000億円を超える不動産の超大型案件に立て続けに携わっている。不動産畑を長く歩んだ梅田圭社長が、その手の内や不動産市場の見通しについて明かした。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

日本の不動産は海外投資家にとって
「無難」な投資先、その真相とは?

――梅田さんは、芝パークビル(東京・港区、売買価格1500億円)や電通本社ビル(東京・港区、同3000億円)という国内最大級の案件に関わるなど、不動産畑を長く歩みました。金利上昇や円安が押し寄せていますが、足元、そして今後の不動産市場をどう見ていますか。

 米国におけるインフレバスター的な金利の急上昇。また、ロシアのウクライナへの軍事侵攻などによるエネルギー不足を背景とした、欧州におけるコストプッシュ型のインフレ。これらによって景気が悪化し、欧米系の不動産ファンドが新規投資に少し慎重になっている部分はあると思います。

 ただ、リーマンショック直後みたいなことが起きるかというと、そこまでの懸念はない。理由は大きく二つあります。

 まず、不動産市況の大幅な悪化は、金融の混乱によって起こるものです。金融機関がバックファイナンスを含めた融資から一斉に手を引いて、不動産が担保処分的に投げ売りされ、それに伴ってどんどんマーケットが悪くなっていく形です。

 その負の連鎖は今、世界で起きていないし、とりわけ日本においては全くその兆候が見られない。これが、不動産市場がリーマンショック直後のようにならない理由の一つ目です。

 そしてもう一つの理由は、海外投資家の日本の不動産に対する関心が非常に高いことにあります。実際、新型コロナウイルスの水際対策が見直され、10月に日本への入国審査が緩和されたことで、毎週のように海外投資家が日本を訪れるようになっています。

 海外投資家というのは、米ブラックストーンさんのようないわゆるグローバルファンドもいれば、アジアのファミリーオフィス系の投資家もいるんですけれども。

――確かに、円安効果を享受できる状況ですからね。しかし、冒頭でも触れましたが、今は金利上昇局面でもあります。海外投資家にとっては、プラス面とマイナス面が混在する複雑な環境だとも言えます。

(金余りで)まだ使わなければならないファンドの資金がたくさんある海外投資家にとって、日本のマーケットは一番「無難」……というとおかしいですが、「相対的に投資妙味がある投資先」なのです。

 海外投資家にとって無難であり、相対的に投資妙味がある投資先――。梅田氏は日本の不動産マーケットについてそう述べる。では海外勢にとって日本市場が、外せない市場と捉えられている具体的な根拠とは一体何か。

 一方、個別案件を巡っては、みずほ信託銀行は芝パークビルや電通本社ビル、大手町プレイスなど、超大型案件を立て続けにモノにしている。

 次ページでは不動産の“プロ”である梅田氏が、それを可能にした“手の内”を明かす。また、みずほ信託を巡る根強い「法人融資業務からの撤退論」に対する考えなどについても疑問をぶつけた。