写真:ユニクログローバル旗艦店「パリ オペラ店」ユニクログローバル旗艦店「パリ オペラ店」 Photo by Ryosuke Shimizu

ユニクロを運営するファーストリテイリングは、2期連続で最高益を更新した。その決算説明会の中で柳井正会長兼社長は「初めて真のグローバルプレーヤーになれる条件が整った」と宣言。そんな同社に今必要なのは、「中国依存からの脱却」ではないだろうか。(イトモス研究所所長 小倉健一)

ファストリが「整った」と宣言した
真のグローバルプレーヤーになる条件

「こんにちは、柳井です」

 2022年10月13日に行われた、ユニクロを展開するファーストリテイリングの決算説明会。その場において、代表取締役会長兼社長の柳井正氏は、「ファーストリテイリング今後の展望」と題するプレゼンテーションで冒頭、こう切り出した。

「私からは主に、ファーストリテイリングが今、 何が最も重要だと考え、何を実行しようとしているのか、さらに今後、どのような考え方で経営を進めていくのか、その点についてお話しします」

 ファーストリテイリングは、最終利益は前期比60.9%増の2733億円と2年連続で過去最高益を更新した。国内店舗数の2倍近くを抱える海外事業が伸び、さらに外貨建て資産の為替差益が円安傾向で膨らんだのが要因だ。なお同社は、為替の一時的な影響を除いても過去最高益を更新したと明かしている。

 一方、売上高に当たる売上収益は7.9%増の2兆3011億円。こちらは、海外ユニクロ事業がけん引した。新型コロナウイルス禍の影響で中国での販売苦戦があった一方で、東南アジアやオーストラリア、北米や欧州で認知度が高まった結果、前期比20.3%の増収となった。

 柳井氏のプレゼンの中で特に印象的だったのは、「初めて真のグローバルプレーヤー、本当の意味でのグローバルブランドになれる条件が整った」と語ったシーンだ。そこで「東京の本部がすべての意思決定をし、各国に指示する形」からの脱却を宣言。それぞれの地域・国で異なる「ローカル」の課題を解決しながらも、グローバルで一貫した方針で成長していくとした。そしてそれを象徴する店舗が最高の立地にあることが大事と強調していた点も強く印象に残った。

 プレゼンの後段に入ると、より売り場、消費者との接点についての話が強調される。具体的には、「店舗を買い物の場」だけでなく「お客様への情報発信の場」「地域のコミュニティの中核」「実体験の場所」へと変革することを強調。店舗スタッフ自らが消費者に語りかけるオンライン対面型販売のライブコマースが人気を博していることなどの紹介に時間が割かれた。

 グローバルな店舗展開に揺るぎない自信が出てきたというのが今回の会見の特徴だろう。東アジア、特に中華圏が圧倒的だった3年前と比べて、明らかに地球規模で事業が成長していることが分かる。

 会見では欧州担当の役員(グループ上席執行役員・ユニクロ欧州CEO〈最高経営責任者〉・守川卓氏)が「ヨーロッパでは、アジアから遠いので、リードタイム(ここでは工場生産から売場まで届く時間のこと)が非常にかかります」と課題を提示。このように、グローバルプレーヤーならではの問題が発生しているようだ。

 そして、ファーストリテイリングが直面しているその問題を解決するための鍵になるのが、「中国依存からの脱却」ではないかと筆者は考えている。