池袋、新宿、渋谷と東京の主要ターミナルをつなぐ地下鉄「副都心線」が6月14日に開通する。都内でも有数の商圏を貫く動脈だけに、人の流れが一気に変わる可能性がある。沿線の百貨店はエリアを越えての競合を前に相次ぎ改装に乗り出した。分があるといわれる新宿に対抗して、池袋、渋谷での巨額投資が続く。
「伊勢丹のために開通するような地下鉄路線」と、ある競合百貨店社長が言う副都心線が6月14日に開通する。1日15万人が利用する見込みだ。
池袋-新宿-渋谷の三大消費拠点を結ぶこの線は、池袋から先は西武池袋線や東武東上線との接続で埼玉県南西部まで、2012年には渋谷から東急東横線に乗り入れて横浜方面までつながる。
「JR埼京線が開通したときにも、お客が新宿に流れるといわれたが、ふたを開けてみるとそんなことはなかった」と、余裕の表情の百貨店関係者もいる。だが、“伊勢丹新線”とも呼ばれる今回の新線開通は少し事情が違う。
売り場づくりでは群を抜く伊勢丹新宿店だが、その弱点がJR新宿駅から徒歩5分かかるという立地だった。副都心線の新宿三丁目駅はその伊勢丹新宿店に直結する。弱みを補完する新線の開通が同店にとって追い風となるのは間違いない。沿線の競合百貨店は対策や改装を急ぐ。
大型投資と2社連合で
新宿に対抗する池袋
5月上旬、池袋駅を挟んで巨艦店を構えるミレニアムリテイリング(傘下に西武百貨店)の佐野和義社長と、東武百貨店の根津公一社長は、お互いの手を固く握り締めた。「まずは池袋にお客を集めよう。できることを協力すれば、新宿とも十分に戦える」(根津社長)との認識を強めた。両社は、池袋地区を盛り上げることで新宿地区に対抗しようと、新線開通に合わせて合同の案内所を設置したり、共通のエコバッグを無料配布する。
その一方で、西武百貨店は自店の改装に300億円を投じる。百貨店の改装では異例の大金だ。西武百貨店池袋本店の真籠顕彦店長は「われわれは、ターミナル店という立地にあぐらをかき過ぎていた」と自戒する。