28日に行われた安倍晋三首相の所信表明演説はおおむね評価できる内容であった。それに本人が何度も草稿を手直ししたことがうかがえた。

 この演説内容は、大きく2つに分けられる。

 1つは政権運営に当たっての強い「決意」であり、もう1つは当面する重要課題に取り組む際の「所信」である。この2つが同等の重みをもって伝わってきた。

「国家のかじ取りをつかさどる重責を改めてお引き受けするからには、過去の反省を教訓として心に刻み、ていねいな対話を心掛けながら、真摯に国政運営に当たっていくことを誓います」

 冒頭部分のこの決意表明に彼は特別の力を込めた印象であった。

 報道によると、彼は首相就任直後、周辺に「もう世の中に受け入れられないと思った」と語ったという。(27日朝日新聞)

 そして安倍首相は6年前の退陣後、気づいた反省点や教訓をノートにメモし続け、今でもそれを読み返しているらしい。

 かつて、吉田茂首相が再登板した例があるが、あのときは第一次吉田内閣の総辞職後も吉田氏は自由党総裁を続けていた。それに対して安倍氏は、退陣後一兵卒となり、3人の総裁を経ての再登板。言ってみればゼロからの再出発であったから感慨無量であろう。再生安倍晋三の真価を見せてほしい。

軸足は「くにの形」から「経済」へ
「統治構造の改革」にも期待

「所信」については基本姿勢を述べるにとどまった。おそらく、2月に予定される施政方針演説に譲ったのだろう。

 アルジェリア人質事件、尖閣問題など喫緊の問題にも触れたが、柱は「経済再生」と「震災復興」だと言ってよい。