完全復活のシナリオ
黒字化するための数値を試算してみた

 さて、このように課金ユーザー中心となった直近の第3四半期の3カ月間の決算数字でみると、単純に計算すると1カ月の赤字は約400億円となります。これを出発地点の構造だと仮定します。

 実は楽天によれば、今後、基地局のカバー率が増えることで他社に払っているローミング費用が大幅に節約できるようになるといいます。その試算数字は開示されていませんが、説明会の資料のグラフに定規をあててみると、概念図としては4割ぐらいコストが下がることになりそうです。

 なので、将来は同じ518万ユーザーでも基地局開発が終われば、赤字幅は200億円程度になると仮定できそうです。では、ARPU1800円で200億円の赤字を解消するのにあと何人新規ユーザーを獲得すればよいでしょうか? 単純計算してみると楽天モバイルの契約者数が1600万件を超えると単月で黒字化しそうです。

 この数字、多いとみるかどうかは微妙ですが、私は楽天グループが乗り越えるべき妥当な目標だと思います。そもそも日本の携帯電話の加入者数はドコモ8600万件、auが6200万件、ソフトバンク&ワイモバイルが4900万件です。2006年ソフトバンクがボーダフォンを買収した時点の契約者数が1500万件だったので、そこからソフトバンクは3倍以上に膨らませたのです。

 今の楽天モバイルの518万件という数は、実力から考えると非常に少ないと捉えるべきでしょう。基地局が増えたことで楽天モバイルは、サービス開始当初よりもつながりやすくなってきたことは事実です。圧倒的な安さという武器もあるわけで、つながりやすい都市部のスマホのギガ数をよく使うユーザーがその強みに気づけば、流れは変わります。

 同時に戦略発表でも強調されていたように2年後にプラチナバンドが獲得できることや法人契約に本腰を入れていくことも契約数の増加に寄与するでしょう。この1~2年で1600万件を達成すれば、5年後に3000万件超の契約数を獲得する可能性も見えてきます。

 他の3社から1000万件ずつ加入者を奪い契約者3000万件の携帯電話会社になることができれば、規模としても堂々とした携帯4強の一角に到達します。そして、この3000万件の契約者から入ってくるARPUを概算すると、楽天モバイルだけで年間3000億円台の営業黒字をたたき出すようになることが推定される――。つまり、楽天グループは時価総額で完全復活というシナリオになるわけです。