「白菜を買うお金で、家が買える街」として
ちょっとしたブームに

 実は鶴崗には中国建国(1949年)よりも前から鉄道駅があり、今年中には高速鉄道駅も開業する予定だ。そうなれば、佳木斯からわずか30分の道のりとなるらしい。これも移住を意識して読む者には魅力的に映る。

 最北の街ゆえ、各戸には集中暖房(セントラルヒーティング)が設置されており、航海で不在中のその暖房代を支払っても、ローン地獄よりはずっとマシ。夏は冷房代もかからないほど涼しく快適で、家にこもって落ち着いて暮らすことができると大絶賛していた。

 こうして、「白菜を買うお金で家が買える」とちょっとした鶴崗マイホームブームが起き、彼に倣って移住する人たちも出てきた。実際にそうやって当時暮らし始めた人たちが今回のブームの水先案内人となり、ネットを使って現地不動産の仲介業をしたり、鶴崗のPRや売り込みを始めたりしている。鶴崗に移住した人たちの生活ぶりを追った、ドキュメンタリー短編映画もYouTubeにアップされている(https://youtu.be/QTNKOkR69jQ)。

「中国で最も安い都市」と題された短いドキュメンタリー(英語と中国語の字幕付き)

南方出身者は北を目指し
北方出身者は南を目指す?

 この動画を見ながら面白いことに気がついた。そこで先住者として紹介されている仲介業者はなぜか2人とも南の広東省出身だ。今回のプチブームのきっかけになった女性も、元は南京市という南方の街で暮らしていた。動画の中でいったん購入した住宅を途中でキャンセルした女性が暮らすのは雲南省だし、街で露天商をやっているのも浙江省出身の夫婦。

 近年自由貿易区に指定された「中国のハワイ」こと海南省には、逆に東北部からの移住者が非常に多いことが知られている。極寒の土地の出身だからこそ暖かい土地に彼らが引かれるのだろうと理解していたが、温暖な南方出身者の目にもほぼ最北の鶴崗が魅力的に映っているとしたら、興味深い。