おひとりさまの老後には、現役時代には見えにくい落とし穴がある! それも踏まえた、お金&老後対策は必須です。男性の3.5人に1人、女性は5.6人に1人が生涯未婚と、独身者は急増中ですが、税金や社会保険などの制度は結婚して子どもがいる人を中心に設計されており、知らずにいると独身者は損をする可能性も。独身者と家族持ちとでは、本来お金についても老後対策についても「気を付けるべきポイント」が違います。独身者がひとりで楽しく自由に生きていくためにやっておくといい50のことを税理士の板倉京氏が著した「ひとりで楽しく生きるためのお金大全」から、一部を抜粋して紹介します。

【お金の専門家が教える】「とりあえず財形貯蓄」は、本当に得になってる?Photo: Adobe Stock

財形貯蓄は、“バブルあるある”

「普通預金以外では、とりあえず財形貯蓄だけやっています」という独身女性に立て続けに会いました。「なんで財形?」と聞くと「親が、財形貯蓄がいいというので……」とのこと。

 これ、実は“バブルあるある”なのです!

 財形貯蓄は、国と会社が連携して従業員の資産づくりを支援する制度で1971年にスタートしました。「一般」「年金」「住宅」の3種類があります。特徴は大きく3つ。

① 毎月、給与から決まった額を天引きして銀行の財形口座に振り込まれる。
② 「年金」「住宅」型は利子に対して非課税(元金合計550万円まで)。
③ お金を引き出す場合は会社に申請する。

本当におトクか、自分の頭で考えよう

 バブル世代が会社に入ったころは預金金利がとてつもなく高く、年利7%なんて時代もありました。100万円預金すると、年間7万円の利息がつくということ。7万円利息をもらうと、税金は約20%ですから1万4000円も引かれてしまいます。

 これが非課税というのであれば、確かにメリットはありますが、今は超低金利時代。年利0.001%です。100万円預けても1年で10円しか利子が付きません。税金は2円。これが非課税になるといわれても……(笑)。メリットというほどの額ではありませんよね。

「住宅」型の財形は、「財形持家転貸融資」という、なんだかありがたい感じの融資が受けられることもメリットといわれていますが、これは、ちょっとした優遇金利を受けられる制度。バブル時代は住宅ローンの金利が8%以上ということもありましたので、ありがたかったかもしれませんが、これも今は超低金利。しかも、ネット銀行やメガバンクの優遇金利の方がこの制度の融資よりも低金利だったりします。

 また、財形貯蓄は、途中で解約しようと思うと、会社に申請が必要なのでお金を下ろすのに1週間程度かかったり、解約手数料がかかることもあります。

 さらに、「年金」「住宅」型の財形を、他の使途で利用するために下ろすと、さかのぼって、利息分の税金がとられてしまうなどのデメリットもあります。

 つまり、「財形貯蓄」は親世代が現役だったバブル時代にはありがたい制度だったけれど、今はほとんどメリットがないというのが実情です。

 ただ、会社によっては、財形の積み立てに上乗せ給付をしてくれるところがあるので、その場合は上乗せ給付次第で検討する余地はあるかもしれません。

 親や先輩などに勧められて「とりあえず財形」している方は、一度、よく考えてみて、本書でご紹介するような、他の方法での資産運用を検討してみることをおすすめします。

*本記事は、独身者向けのお金&老後対策を書いた、板倉京著「ひとりで楽しく生きるためのお金大全」から、抜粋・編集して構成しています。