また英紙「ガーディアン」は、カタールがW杯開催国の権利を勝ち取った2010年以降、南アジア諸国(インド、パキンスタン、ネパール、バングラデシュ、スリランカ)から来た労働者が6500人以上亡くなったと報じている。

 同報道によると、死亡記録は職業や職場で分類されていないが、死亡者の多くはW杯関連の建設プロジェクトで働いていた可能性が高いという。

 なおカタール政府は、W杯のスタジアム建設現場での死亡は38人しかいないと主張しており、そのうち35人は業務と無関係だという見解を示している。

カタールのW杯アンバサダーが
同性愛は「精神の傷」発言で波紋

 もう一つの批判は、いわゆる「LGBTQ+」問題だ。カタールでは、同性愛は違法だ。そうした背景もあり、カタールの治安部隊がレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーなど性的少数者の人々を恣意的に逮捕していると非難を受けている。

 また、元カタール代表選手でW杯アンバサダーを務めるハリド・サルマン氏の発言も波紋を呼んだ。11月初め、ドイツの公共放送ZDFのインタビューで同氏は、同性愛は「精神の傷」であると発言したのだ。そのことにドイツ世論が激高。ドイツ代表はこうした経緯の中で、多様性や差別反対を訴える腕章を着けてプレーする予定だった。

 しかし、国際サッカー連盟(FIFA)が腕章を着用して出場すればイエローカードを出すなどの制裁を科すと通告。その結果、日本戦を前に、出場メンバー全員が「口を封じられた」と口を手でふさぐアピールをすることにつながった。

 先述のHRWによれば、カタールではLGBTQ+の人々に対して「19年から22年の間に、警察の勾留中に激しい殴打が6件、セクハラが5件あった」という。また、HRWはLGBTQ+であるカタール人6人にインタビューしたところ、全員が地下刑務所に拘束され、「言葉による嫌がらせや、血が出るまで平手打ちや殴る蹴るなどの身体的虐待」を加えられたのだと報じている。