ボーナスの基本的な考え方
次の日の午後、C総務部長は要件が終わり帰ろうとしたD社労士に、Aのことで相談したいと言った。そして詳細の説明が終わると困った顔になった。
「ボーナスの査定基準や計算方法って、社員に説明しないといけないんでしょうか?」
D社労士は、まずボーナスの基本的な考え方について説明した。
○ 賞与は賃金と違い、法律で支給を義務化されていない。従って、賞与制度がない企業もある
○ 企業に賞与制度がある場合は、その旨を就業規則に明記する必要がある
→支給条件や支給時期、査定対象期間など
○ 賞与制度の内容(支給時期、賞与額の計算方法など)は、会社が自由に決めることができる
○ 労働条件の変更がなく賃金のみを減額することは従業員への不利益変更となり、合理的な理由(例えば企業の倒産危機など)がない限り認められない。しかし賞与は、企業の業績などに合わせて人件費をコントロールする役割もあるため、下記の項目について就業規則に記載する企業が多い
・企業業績の変動によっては、賞与の支給日や時期の変更、不支給とする場合があること
・賞与額は、会社の業績および従業員の勤務成績などを勘案して社員ごとに決めること
→勤務成績を決めるための査定項目などを就業規則に明記する義務はない
○ ただし、就業規則にて、「賞与を○月○日に支給する」「賞与は基本給の○カ月分支給する」などと明記されている場合は、その内容で賞与を支給する義務がある
賞与規定には「賞与額は社員の勤務成績によって決まる」の記述が
「甲社の賞与規程を確認したいので、就業規則を見せてもらえませんか?」
・賞与の査定対象期間……冬季賞与:4月1日~9月30日、夏季賞与:10月1日~翌年3月31日
・賞与の支給日……冬季賞与は12月1日、夏季賞与は8月1日
ただし、会社の業績が著しく低下した場合、その他やむをえない事由により、支給日の延期や、不支給にする場合がある
・賞与額は、会社の業績や従業員個々の勤務成績によって決定する
・賞与支給日に在籍する従業員にのみ賞与を支給する
内容を確認したD社労士は、C総務部長に尋ねた。