そもそも「デジタル円」ってどんな仕組み?
デジタル円とは、わが国の中央銀行である日本銀行が発行する、デジタル化された法定通貨を指す。デジタル円は、(1)交換の手段(2)価値の尺度(3)価値の保存――という、通貨の三つの基本的な機能を持つことにある。デジタル化されているので、紙幣は電子化され、主にネット上で発行・流通される。
日銀は21年以降、2段階に分けてデジタル円の検証を行った。21年4月から22年3月まではデジタル円の発行、流通などに関する検証が行われた(フェーズ1)。22年4月から23年3月までは、フェーズ1の結果を生かしてデジタル円に対する利息の適用など、より踏み込んだ検証が行われている。
その上で、23年春から実際の利用を想定した実証実験を行う予定だ。具体的には、国内の民間銀行と連携して、入出金などデジタル円の利用に支障がないかなどが検証される。インターネットに接続できない状況下での利用可能性も検証される。
大きな目的は、デジタル時代にふさわしい決済制度を目指すことだ。スマートフォンの普及によって、世界各国でモバイル決済をはじめとした新しい決済方式が増えた。現金(硬貨や紙幣)を用いた経済運営の場合、利用者はスマホのアプリにお金をチャージし、決済を行う。それには手数料などのコストが発生する。
一方、法定通貨がデジタル化されれば、現金ではなくデジタル円でスマホのアプリなどを通して給料を受け取り、消費や投資を行うことができる。現金の利用に比べて手間が省ける。また、ビットコインなど価値が不安定な仮想通貨への需要も低下する可能性が高まる。それは、金融システムの安定性と金融政策の有効性を担保するために重要なことだ。
なお、日銀は現金に対する需要がある限り、現金の供給も責任をもって継続すると繰り返し表明している。デジタル円によって現金の利用がなくなるわけではない。