「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。
深い睡眠が足りないと
認知症リスクが高まる
【前回】からの続き ノンレム睡眠には、その深さで4つのステージがあります。寝入ると、いきなりステージ4のいちばん深い睡眠まで到達します。このときにホルモン分泌にかかわる脳の「下垂体(かすいたい)」から、成長ホルモンが分泌されます。子どもはもちろん、大人もこのタイミングで分泌されています。
アルツハイマー型認知症の引き金となるアミロイドβを排泄する「グリンパティック系」の働きがとくに活発になるのは、やはり深い眠りのノンレム睡眠のときです。眠りが深くなればなるほど、その作用は強いと考えられます。
睡眠時間が足りなかったり、深い眠りが十分にとれなかったりすると、アミロイドβの排泄が滞って異常たんぱく質が蓄積しやすくなりますから、要注意です。
加齢と活動量不足が招く
4つの「睡眠障害」
現在、日本人の5人に1人は、眠りに関してなんらかの悩みを抱える「睡眠障害」を抱えているとされます。必要な睡眠時間には個人差がありますが、一般的には1日7~8時間程度。睡眠障害があると慢性的な睡眠不足になり、眠りの質も落ちて深い眠りがとりにくくなります。
睡眠障害には、おもに次の4つがあります。
◉ 中途覚醒……いったん眠りについても夜中に何度も目覚める
◉ 熟睡障害……眠りが浅く、寝ているわりに熟睡できない
◉ 早朝覚醒……希望の時刻より早く目覚め、眠りが足りないのに眠れない
加齢が原因で、睡眠障害に悩む人の割合は増えてきます。加齢とともに日中の身体的な活動量が少なくなると、睡眠時間が減り、入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒などが起こりやすくなるのです。安眠へと誘う「メラトニン」というホルモンの分泌量が、加齢によって減ることも、その背景の1つにあると考えられます。【次回に続く】
※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。(文・監修/松原英多)