「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。

【91歳の医師が明かす】よくありがちだけど認知症のリスクを高める“驚きの真実”イラスト:chichols

睡眠不足が
認知症リスクを高める

昔から「寝る子は育つ」といわれます。寝ている間に分泌される「成長ホルモン」が、子どもの成長を助けてくれるからです。質の高い眠りが求められるのは、子どもだけではありません。大人も日中アクティブに動き回ったら、夕方以降は休息して夜ぐっすり眠り、日中の疲れをとるというのが理想的なサイクルです。

眠りは認知症とも関わっています。なかでも、アルツハイマー型認知症は、睡眠不足で発症リスクが上がることがわかっています。アルツハイマー型認知症の原因の1つである「アミロイドβ」(異常たんぱく質)は、脳内のリンパ系に相当する「グリンパティック系」(グリア細胞とリンパ系を合わせた造語)を介して、脳の外へ排泄されています。

睡眠不足だと、このしくみが正常に働かなくなり、アミロイドβの蓄積が加速して、認知症リスクが高まるようなのです。また、睡眠不足で起きている時間が長くなりすぎると、脳の神経細胞の活動時間も長くなり、それがアミロイドβの余分な生成につながるという説もあります。

寝る高齢者は
認知症になりにくい

アミロイドβを排泄して認知症を避けるためには、睡眠不足を解消して、深い眠りを確保することが大切です。「寝る子は育つ、寝る高齢者は認知症になりにくい」のです。

睡眠不足解消のコツをお伝えする前に、眠りについての理解を深めておきましょう。ヒトには、日がのぼっている間に活動して、日が沈んだら休息するというリズムがあります。このリズムをつくっているのは、脳にある「体内時計」です。

睡眠不足解消の基礎知識

体内時計は、約24時間周期で体温や血圧などを制御しています。体内時計の働きで眠りに落ちると、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」という2種類の眠りを交互に繰り返すようになります。ノンレム睡眠では、脳も身体も深い眠りに入ります。レム睡眠では、身体は眠っているものの、脳は活発に活動しています。

ノンレム睡眠とレム睡眠は90~120分の周期で繰り返しており、全体の7~8割を深い眠りのノンレム睡眠、残りを眠りが浅いレム睡眠が占めています。ちなみに夢を見ているのは、レム睡眠のときです。【次回に続く】

※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。(文・監修/松原英多)