サウジアラビアでも高まる中国のプレゼンス

 カタール隣国のサッカー強国であるサウジアラビアでも、中国のプレゼンスは高い。

 サウジアラビアのインフラ事業のために日本から赴任していた元駐在員は「中国企業はすごいスピードでビジネスを拡大させています」と恐れをなす。だが、それ以上に驚愕(きょうがく)したことがあるという。それは、「サウジでは子どもの教育にまで、中国の影響が及んでいる」ということだった。

 調べてみると、確かに2019年、サウジ皇太子のムハンマド・ビン・サルマン氏が「すべての教育段階において中国語を取り入れる」と声明していた。

 ちなみに、アフリカのケニア共和国では、2020年から小学校で中国語課程が導入され、ウガンダ共和国では小学1、2年生で中国語が必須科目になった。「中国語普及戦略」を支えるのは、孔子学院(中国語および中国文化に関する教育機関)による世界展開だ。

 中国国際中文教育基金会によれば、2019年末時点で世界162の国と地域にある550カ所で孔子学院が運営されている。「中国語人材」を育成することは、将来的な対中友好の関係強化につながり、中国が対外進出する際の強いアドバンテージとなる。

 W杯開催中の11月22日には、液化天然ガス(LNG)をめぐる中国とカタールの契約のニュースが流れた。中国石油化工集団(シノペック)は国営カタールエナジーから、27年間にわたる年間400万トンのLNGを調達する契約を行ったという。

 ロシアがウクライナに侵攻して以来、LNGの需給は大きな影響を受けている。そんな中で長期契約を取り付けた中国は、W杯にこそ出場できなかったものの、それ以上の“国益”を手に入れることに成功したといえるだろう。

 他方、日本は1997年来、カタールとLNG輸入を通じて関係を密にしてきたが、JERA(東京電力ホールディングスと中部電力の合弁会社)は2021年末に到来した長期売買契約の満了を更新しなかった。同年、中国は27カ国から年間8120万トンのLNGを輸入し、日本の7520万トンを抜いて世界最大の輸入国となった。