米アップルの小さな決断が、インド経済の大きな発展につながる可能性がある。アップルは最近、主力商品のスマートフォン「iPhone(アイフォーン)14」をインド南部で製造すると発表した。アップルが、発売間もない最新鋭のスマホをインドで生産するのは、これが初めてだ。与党インド人民党(BJP)の支持者らは、今回のアップルの決定について、関税引き上げと生産水準に連動する補助金を通じた工業化を目指すナレンドラ・モディ首相の取り組みへの信任投票だと受け止めている。しかし、インドが以前に進めた国家主導の工業化の各種取り組みは、失敗に終わっている。今回も同様の結果になるかもしれない。製造業を機能させることは重要だ。ソフトウエアの輸出に関するインドの成功は、国家の威信を高め、貴重な外貨獲得手段になるかもしれない。昨年のソフトウエア輸出額は1720億ドル(約23兆4000億円)に上った。しかし、それによって創出された雇用は、これまでのところ比較的少ない。昨年のインドのIT分野の就業者数は510万人にすぎず、人口14億人の国としては少ない。製造業の活力を欠いたまま、貧困から繁栄へと進んだ大国は存在しない。
【オピニオン】インドは中国を出し抜けるか
官僚主義や関税が障害となる恐れも
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