西海事件の証拠隠蔽疑惑で
前政権幹部らへの捜査が加速

 北朝鮮との境界線に近い黄海(韓国名「西海」)において海洋水産部の職員が北朝鮮軍により射殺された「西海事件」で、文在寅前政権は、同職員が「自主的に越北しようとしていたのが原因」との結論を出した。

 この事件について検察は、事実に反する証拠を隠滅するため主導的な役割を果たした疑いで、捜査を加速化させている。

 検察は9日、徐薫(ソ・フン)前国家安保室長を拘束・起訴した。前室長は職員が射殺された翌日、関係長官会議を主催し、「自主的な越北」の判断を確定させるため、国防部と海洋警察庁に対し、この結論に反する諜報報告を削除するよう指示した疑惑を持たれている。

 これを踏まえ国防部は諜報報告書と傍受情報60件を国防部の軍事統合情報処理体系から削除し、国情院は諜報報告書など46件の資料を削除したとの疑惑が持たれている。

 検察が事実の改ざんを巡り、前政権幹部に対する捜査を進めていることに対し、文在寅前大統領は1日、「深い懸念を表明する。度を越さないことを願う」とする内容の表明文を発表した。これは、当時の青瓦台上層部に捜査が及ぶのをけん制する狙いがあるとみるべきだろう。

文在寅政権の北朝鮮政策を
尹錫悦政権は全面否定

 尹錫悦大統領は、文在寅政権の北朝鮮政策を全面的に見直した。

 文在寅前大統領は、北朝鮮が非核化に応じるであろうとして、南北首脳会談を行い、米朝首脳会談を仲介、北朝鮮への制裁緩和を主要国に働きかけた。これに対し、尹錫悦大統領は、北朝鮮の非核化という目標は降ろさないものの、北朝鮮が強硬に出れば、これに応じて自国および米国との連携による国防力の強化を図っている。米軍との合同軍事演習も復活させ、米軍の空母や戦略爆撃機が参加した訓練も実施した。

 さらに、文在寅前政権は国防白書の中から「北朝鮮は敵」という表現を削除したが、尹錫悦政権はこれを6年ぶりに復活させる。