AIG危機が引き金、保険の国際機関IAISを事務局長の私がどう改革したかPhoto:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 金融監督分野において国際規制の基準制定主体が果たす役割の重要性は2008年の国際金融危機で飛躍的に高まり、体制も大幅に強化された。このことが国際規制改革を進展させる土台となった。しかし、この組織強化は決して容易なことではなかった。今回は、国際基準制定主体の体制がどのように強化され、またそれが実現するまでにどのような道のりをたどったのかを、保険監督者国際機構(IAIS)を例に見ていきたい。

既存体制の限界

 08年の国際金融危機を通じて、従来の国際金融の協力体制では金融危機時に十分に対応できないことが明らかになった。当時直面していた国際金融の課題は、巨大な金融機関であるG-SIFIsへの監督の甘さ、破綻状態となった金融機関の再建・破綻処理制度の不備、シャドーバンキングがもたらすリスクなど、金融分野全体で対応しなければ解決できない大問題ばかりであった。国際基準制定主体の役割が増大し、従来の体制を見直さなければ任務が遂行できなくなった。

 こうした背景の下、銀行・証券・保険の監督者間の意見交換を中心としていた従来の金融安定化フォーラム(FSF)に代わり誕生した金融安定理事会(FSB)が、金融分野をまたがる基準策定で中心的な役割を果たすようになる。各金融分野の国際基準制定主体であるバーゼル銀行監督委員会(BCBS)、証券監督者国際機構(IOSCO)、IAIS等との協力も緊密になった。

 G7からG20へと国際金融監督体制のリード役が移行したことの影響も大きい。従来の先進国・主要国だけではなく、中国やインドといった世界経済で主要な役割を果たす新興国も加えて議論する必要があったため、国際基準制定主体のメンバーも大幅に増加した。