6000字のプロフィルで厳選
競争率が上がる中で必要な「質」

 一見すれば万能に見えるスカウト型新卒採用だが、利用上の注意点もある。

 例えばirootsでは、自分の志向、幼少期(過去)から将来像(未来)までのこと書いた文章(テキスト)、性格価値観診断テストにより定量化された性格特性、スキルの4項目を記したプロフィルが、会社との最初の接点になる。プロフィルを書くことで、学生自身が頭の中を整理し、自己分析につながる。また、価値観や性格特性を会社に知ってもらえるため、自分に合う会社から適性を見極めてもらえる。

「スカウト型新卒採用」で就職ミスマッチは防げるのか?「iroots」では4項目のプロフィルが採用への入り口となる 提供:エン・ジャパン
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 しかし、幼少期から将来像までのテキストの文字数だけで最大6000字。忙しい中、それだけのプロフィルを書き上げるのは大変だ。そこが最大のハードルになるといってもいいだろう。

 とはいえ、就活に対して前向きな学生は「優良会社からスカウトが来るのであれば」と頑張って登録する。その結果、学生が厳選されていくという特徴がある。

 学歴にとらわれず会社にアピールできることもポイントで、「上位校以外でも、大手優良企業からスカウトを受け取っている学生は多数いる」(田野岡氏)という。

 会社側の注意点としては、必ずプロフィルをしっかり読み込んだ上でスカウトのメールを送る必要があることだ。これは一見、当然のことのように思えるが、実はスカウト型サービス業界全体で見るとそうではないらしい。100人全員のプロフィルを読み込んでスカウトをするのは手間がかかるため、人事担当者が読み流してしまうケースもある。

 それに対してirootsでは、例えば「3年間、陸上を頑張ってきた。努力する性格」と学生が書いたとすると、それを会社がしっかり読み込んだ上で「努力する性格が当社のこういう仕事に生かせそうだからスカウトした」と、しっかりスカウトの文面に表現してもらうように徹底している。そのため利用者は、おのずとそのサービス思想に共感する会社に厳選されていく。

 いずれにせよ、スカウト型の新卒採用を使えば、入社後のミスマッチを減らせる可能性が高まると見ている学生、会社は増えている。

 一方で、今後の課題として、スカウト型の認知度が高まるほど競争率も高くなり、求人も応募も難易度が上がることが挙げられる。そのため、会社側はスカウトの質、学生側はプロフィルの質(濃度)を高めていくことが求められている。