ロシア・ウクライナ戦争、高インフレ、コロナ禍……。かつてない困難に直面する世界は、どこへ向かうのか。特集『総予測2023』の本稿では、国際政治学者のイアン・ブレマー氏(ユーラシア・グループ社長)を直撃。同氏はロシアがウクライナへ核攻撃を仕掛ける可能性を予測しており、キューバ危機以来の深刻さだと訴える。リーダー国家不在の世界を「Gゼロ」と形容し、前回特集「総予測2022」の時点でロシアのウクライナ侵攻を“予見”していたブレマー氏に、世界的な高インフレがはらむグローバルリスク、米中覇権争いの行く末や台湾侵攻シナリオの現実味までを大展望してもらった。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
ロシアは以前にも増して
世界のならず者国家と化している
――ロシアがウクライナに戦争を仕掛けた2022年は、世界の地政学的サイクルの大きな転換点となったのでしょうか。
ええ、残念ながらその通りです。世界は経済的な好不況と、地政学的サイクルの影響を受けますが、いわば地政学的なリセッション(不況)が表面化したわけです。
ウクライナ侵攻によって、世界は数年単位ではなく、もはや1世紀にわたるような巨大な余波を被ることになりました。
ウクライナを脱出した数百万人の難民が、欧州各地になだれ込んでいます。食料、肥料の価格上昇や逼迫が影響し、特に発展途上国では、飢餓に苦しむ人々の増加につながっています。これらは全て、地政学的サイクルの逆行に伴う直接的な経済面の悪影響です。
ロシアはますます、世界のならず者国家と化しています。中国と共に世界の舞台で立ち上がり、真の友好国はどこなのかと際限なく探り始めました。プーチン大統領は、欧州の過去30年にわたる「平和の配当」を、自ら引き裂く必要があると感じていたわけです。
――ロシアが今後、核使用に踏み切る可能性をどう見ますか。
前回特集「総予測2022」の時点で戦争の発生を予見していた著名政治学者のブレマー氏。同氏がロシアの核攻撃の深刻さを訴える理由、世界的な高インフレが抱えるグローバルリスク、米中覇権争いの行く末、台湾侵攻シナリオの現実味について語った内容とは!? 一方で「重大な危機」の時代には、同時に希望も見出すことができると話す。これらの内容を次ページで一挙に明かしていく。