48時間前に申請して認められれば
“工作員”も自衛隊施設にドローンを飛ばし放題

 複数の自衛官によれば、小型無人機等飛行禁止法の対象の自衛隊駐屯地に対する“民間人”からの自衛隊施設への飛行申請も特段の理由がなければ自衛隊側は認めるようになっており、原則禁止となっていないという。

 小型無人機等飛行禁止法では、ドローンを重要施設周辺で飛ばす場合は、当該施設管理者――自衛隊施設であれば駐屯地もしくは基地司令――の事前承認と警察への48時間前の通報を義務付けている。これらを満たせば飛ばせてしまうのだ。

 自衛隊駐屯地としては“民間人”からの申請があれば、「国籍や思想で差別している」や「市民の権利を侵害している」というクレームを恐れてこれを事実上は拒否できないという構造なのだ。自衛隊施設での民間人のドローン飛行は、原則禁止にすべきだ。

小型無人機等飛行禁止法の
自衛官への適用除外もしくは包括許可すべきだ

 このような理不尽な規制を自衛隊に強いている小型無人機等飛行禁止法だが、これは何を意味するのか。それは自衛隊がドローンを運用する前提の組織になっておらず、根本的にドローンを重視していないということだ。

 実はこれ以外にも電波法や無意味な規則によって、自衛隊のドローンは性能劣化と機能不全を起こしている。例えば、ドローンのバッテリーも自動的に性能劣化が分かるのに、わざわざノートに充電回数等を記録し管理している。こんな軍隊は地球上に存在しない。

 重要施設以外の演習場などでは事前通報は不要だが、それ以外ではまともにドローンを使えないのが自衛隊の現状であり、基本的には日本の演習場で戦うことが前提の軍隊という格好だ。

制度の抜本的改革をしなければ
装備を調達しても宝の持ち腐れになる

 一部の兵器評論家は「ドローンは自衛隊でもすでに運用されている」などと自衛隊はドローンで遅れていないなど必死に強弁するが、これが兵器単体しか見ていない空論なのは明白だ。

 本来、ドローンは人間に代わってリスクをとれる存在だ。それが本当に必要な重要施設で事実上使えず、自衛官という人間がドローンの代わりにリスクを引き受けねばならない現状は論外だ。

 自衛隊の構造的な問題については、本稿でみたように、一応は例外規定らしきものもある。しかしそれは、実際には機能していない。こうしたことが自衛隊では日常茶飯事だ。上層部は「規則上はできないことはないのだから、やっていない現場の責任」とうそぶき、マスメディアや国会で問題になれば「周知徹底します」とし、その結果、現場では無駄な手続きが増えることになり、ますます手続きはしなくなる。

 こうした悪循環も、これを契機に打ち止めにすべきだ。

 以上を踏まえ、防衛省・自衛隊は、今後調達するドローンによって“新しい戦い方”ができるような制度に抜本的な改革や整備を行うべきだ。少なくとも小型無人機等飛行禁止法から自衛官を適用除外とするなり、包括的な飛行許可を与え、自衛官が積極的にドローンを活用できるような仕組みづくりが必要だ。このままでは今後の5年間で調達していく1兆円のドローンも宝の持ち腐れになりかねない。