「ガクチカ」は何のため?
どこにも正解はない
「ガクチカ」の基本は「自分らしさ」をアピールすることだ。自分の強みや特徴を明確にすることは、相性の良い企業に出会い、社会人としてのキャリアを良い形でスタートさせることにつながる。
ただ、多くの学生はともすれば「どこかに正解があるはず」「うまくいく方法があるはず」という発想をしがちだ。そして、ネット上には「有名企業から内定を勝ち取った就活生のES」などといった情報があふれている。
大学までの試験は、すべて正解のある問題を解くものだった。同じ発想でそうした「お手本」をまねたくなるのも無理はない。
しかし実際には逆効果だ。採用担当者や面接官はその道のプロであり、ネット上のテンプレートをなぞっただけのESや面接での受け答えはすぐに見抜かれる。「この学生は自分で考える力がない」という印象を与えかねない。
あるいは、「何か目立つエピソードを考えなくては」と焦り、リアリティのない武勇談を捏造して、面接官に見抜かれる学生も少なくないだろう。
「書くことがない」と嘆く前に
やるべきこと
そもそも就活とは、これまでの「学生モード」の意識を「社会人モード」に切り替える作業、期間である(下図参照)。
24年卒の学生は入学と同時にコロナ禍に見舞われた。大学の授業はもとよりゼミやアルバイト、サークルなどの活動にまともに参加できず、「ガクチカでアピールできる実績がつくれずに不安」という声が後を絶たない。
しかし、企業はアピールできる実績を求めているのではない。どのような状況で、何を考えて、何を実行したのか、いわば人間性や人間力を知りたがっている。
「学生の本分である何を勉強・研究してどんな知見を得たか、どんな本を読んで心に残ったかなどを、面接でPRしてもらえれば十分」と考える企業は多い。
学生は不安にさいなまれず、コロナ禍という非常事態をどう受け止めたのか、そこで何を考え、前に進むためどのような努力をしたのかを冷静にESに書けばよい。
また、当たり前ではあるが、多くの企業は今回のコロナ禍が学生の大学生活に与えた影響について理解している。
ESの「ガクチカ」に関する設問にも、きちんと配慮している。大学だけでなく「中学や高校」「人生において」「生まれてから」の経験を書いてもいいなどと期間を広く設定したり、「あなたらしさが分かるエピソードを」というように自己紹介的なものを求めたりするケースも多い。