ポモドーロ式とハーバード式を使い分ける

――仕事途中の休憩のとり方も徹底しています。

四角 ビジネスパーソンへのおすすめは、25分仕事に集中したら必ず5分休憩する「ポモドーロ・テクニック」です。これは、メール処理や書類整理などのタスクを一気に片づけるときに効果的で、慣れてくるとタスク処理スピードが数倍に高まります。たった5分の休憩ですけど、机の横で軽くストレッチしたり、座ったまま目を閉じて深呼吸したり、オフィス内を歩くだけでかなりリフレッシュできます。すると次の25分に超集中できるんですね。

 逆に、創造性を要する企画書作成や、深く思考する執筆のときに僕がよくやるのは、45分仕事して15分休むハーバード式のタイムマネージメントです。ポモドーロ式もハーバード式も、時間を刻むことによって、それまでの作業の振り返りができ、自分がさばける「タスク量」を見積もれるようになります。それがまた次の作業の生産性を高めてくれる。

「今日は6時間ぶっ続けで仕事を終わらせよう」と意気込んでも、絶対に集中力はもたないし、生産性を決める「超集中の時間」もゼロになりがちです。生産性が低いままあっという間に6時間過ぎて、「結局、仕事が終わらなかった」と後悔することになりかねません。そういう状態になってる人は、結構いるはずです。

脳疲労とストレスが激減する、とっておきの「オンとオフの切り替え方」とは?

――耳が痛いです……。最近はタイパ(タイムパフォーマンス)を意識して、動画も倍速で見る若い世代が増えているそうです。効率性を重視するあまり余白がなくなって、脳が休まる暇がないようにも感じるのですが。

四角 動画も、何を見るかによって脳の使い方が変わります。その違いを僕は、「ストック型」と「フロー型」と呼んでいます。たとえば、次々に自動再生されたり、レコメンド表示される動画サイトはドーパミンを大量放出させるから、脳が疲れるフロー型です。一方、好きな映画をじっくり鑑賞するのは充実度が高く、脳を疲れさせないストック型です。その時間は自分の世界に深く没入できるので、完全なセルフケアタイムになります。

ライブ体験は完全なるセルフケアタイム

――私事で恐縮ですが、先日、サニーデー・サービスのライブで3時間ずっと好きな音楽を生で聴き続けて最高だったんですが、それもストック型でしょうか?

四角 サニーデーいいですよね! ライブは間違いなくストック型のセルフケアタイムです。五感や感情が刺激されて夢中になり、仕事を完全に忘れて心が満たされますから。音楽に限らず、舞台、イベント、キャンプ、サウナなども同じで、生の体験が好きな人は身体感覚が鋭いためか、仕事ができる人が多いです。

 僕の『超ミニマル主義』の担当編集者もベストセラーを何冊も出している超多忙な人ですが、観劇が趣味で美味しいお店にもすごく詳しい。仕事ができる人ほど、そういう生体験のセルフケアタイムを大事にしていますね。

――もうひとつ「なるほど!」と思ったのは、苦手な仕事を時間を決めてゲーム化する発想の転換です。私は領収書の整理が苦手なのですが、終わったあとに、自分へのごほうびを用意するアイデアは早速実行しようと思いました。

四角 領収書の整理は確かに面倒くさいですよね(笑)。部屋の片づけが苦手だったり、歯磨きするのも面倒だという人もいたりしますけど、どちらもやらないわけにはいきません。そういうときは、苦しいだけの時間にしない工夫をして短時間で終わらせる目標を立てると、前向きに取り組めます

 あと、シャンパンのミニボトルを冷やしておくとか、ミシュラン星付きの店でデザートをテイクアウトしておくとか、どんなささいなことでもいいので、作業が終わったあと自分へのご褒美を用意するといいです。「これが終わったらお楽しみが待っている」と思えるだけで気持ちが上がりますから。コツは、「面倒」というマイナス感情を、「わくわく」というプラス感情で帳消しにすることですね。

 ちなみに僕は、瞑想しながら歯を磨いています。

脳疲労とストレスが激減する、とっておきの「オンとオフの切り替え方」とは?

――坐禅を組んで歯磨きを?

四角 いえいえ(笑)。瞑想には動的瞑想と静的瞑想の2つがあるんですよ。みなさんが思い浮かべる坐禅は静的瞑想です。でも実は、同じ動作を繰り返すことで自然と無心になれる動的瞑想のほうが入りやすいんですね。

――ということは、歯磨きしながら目を閉じているんですか?

四角 僕は閉じますね。閉じずに、目を薄く開けていてもOKです。無心になるのが難しい場合は、自分の呼吸だけに意識を集中させたり、「コーヒーの香りがする、遠くで車の音がする、お腹が鳴った」というように五感にフォーカスすれば、誰でも瞑想に入れます

仕事の合間の家事は動的瞑想タイムになる

――言われてみれば、お茶碗を洗ったり洗濯物を干したり、単調な作業をしていると無心になりやすいです。あれも一種の瞑想状態なんですね。

四角 まさにそうです。在宅ワークで仕事の合間に休憩したいとき、家事をすると脳の疲れがとれていい気分転換になるんですよ。よく、在宅ワークしているとついつい家事をしてしまって休む暇がないとおっしゃる方もいますけど、実は逆なんです。僕は、前述のテクニックの5分や15分の非集中時間に、動的瞑想として家事をしています。

――もうひとつ、早寝早起きによる良質な睡眠へのこだわりも参考になりました。ただ、子どもがいると寝静まってくれた後の自由時間が貴重で、ついつい夜更かししてしまいます。

四角 うちには1歳半になる息子がいるのですが、夜7時に寝かしつけてそのまま一緒に寝てしまいます。僕は7時間寝れば自然に目が覚めるので、夜中の2時に起きるんですね。息子は12時間以上寝るので、起きるまでの5~6時間が仕事の時間なんです。

 でもこういう話をすると、「そうは言ってもやっぱり子どもが寝静まった後の夜にこそゆっくり自分の好きなことをしたい」という意見が飛び交うことがあります。そういう思い込みが悪習慣につながり、なかなか抜け出せなくなってしまうんですよね。

―― まさに習慣を変えるほど難しいことはありません。

四角 でも朝型を2週間続ければ自然とルーティン化しますよ。早い人は1週間で慣れます。なぜなら、人の体の仕組みも、動物と同じように太陽が出ている間に活動するようになっているから。僕はもう長い間、太陽のリズムで生活してるので、久しぶりに日本に帰国してイベントやセミナーで夜まで仕事していると結構しんどいです(笑)。

 ホルモン分泌だけ見ても、夜はメラトニンの影響で眠たくなり、朝は集中力を最大化するコルチゾールが自然に最大量分泌されます。最小限の時間で最大パフォーマンスを発揮するためにも、体の摂理に抗わないことと、良質な睡眠は絶対ルールです。短時間で仕事に超集中して、自由な時間を多く確保するためにも、朝型をおすすめしますね。

【第4回へ続く】

『超ミニマル主義』では、「手放し、効率化し、超集中」するための全技法を紹介しています。

【大好評連載】
第1回 【最も“非生産的”な働き方は何?】仕事を軽くして圧倒的な成果を出すたった1つの方法
第2回 【“ネット依存”が病気の原因に…】「スマホ依存症の人」が今すぐ始めるべきこと

脳疲労とストレスが激減する、とっておきの「オンとオフの切り替え方」とは?四角大輔(よすみ・だいすけ)
執筆家・環境保護アンバサダー
1970年、大阪の外れで生まれ、自然児として育つ。91年、獨協大学英語科入学後、バックパッキング登山とバンライフの虜になる。95年、ひどい赤面症のままソニーミュージック入社。社会性も音楽知識もないダメ営業マンから、異端のプロデューサーになり、削ぎ落とす技法でミリオンヒット10回を記録。2010年、すべてをリセットしてニュージーランドに移住し、湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営む。年の数ヵ月を移動生活に費やし、65ヵ国を訪れる。19年、約10年ぶりのリセットを敢行。CO2排出を省みて移動生活を中断。会社役員、プロデュース、連載など仕事の大半を手放し、自著の執筆、環境活動に専念する。21年、第一子誕生を受けて、ミニマル仕事術をさらに極め――週3日・午前中だけ働く――育児のための超時短ワークスタイルを実践。著書に、『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』(サンクチュアリ出版)、『人生やらなくていいリスト』(講談社)、『モバイルボヘミアン』(本田直之氏と共著、ライツ社)、『バックパッキング登山入門』(エイ出版社)など。
脳疲労とストレスが激減する、とっておきの「オンとオフの切り替え方」とは?