もっとも、『ネット炎上の研究』(田中辰雄/山口真一著、勁草書房)によれば、炎上参加者は「ネットユーザーの0.5%」にすぎないというデータもある。そのため、トイレ掃除を実際にどれだけの人が不快に思っているかは不明だ。また、美徳というものは個人の考え方にもよる上、時代によっても評価が変わってくる。
だが、その時々の世間の価値観に敏感でなければ、共感を得られるストーリーは作れず、ホッピーファンを増やすことも難しい。ノロウイルスやコロナなど衛生意識の高まりもある中、トイレ掃除の教育に対して批判的な声もあると、事前に察せられる嗅覚も必要だ。
人材育成・管理の面では、ストーリーと実態との間に乖離(かいり)があるホッピービバレッジだが、まだ道半ばだ。今後も試行錯誤や方針転換を重ねていくだろうし、そうせざるを得ない状況ともいえる。なぜなら、今後進出する予定のアメリカでも、日本でのように悪評が広まれば、ホッピーのマイナスイメージにつながりかねないからだ。
「アメリカでのブランディングのあり方については12年から検討し続けています。すでに向こうでもごく一部の飲食店様にてホッピーは販売されていますが、今後は、日本の食文化と共にホッピーを楽しめる飲食店『mina-chaya(ミーナ茶屋)』を展開する予定です。大変有り難いことに日本市場での知名度は高いホッピーですが、従来の商品イメージが強すぎることからなかなか新しいことにチャレンジしづらい面もありました。世界最先端の街で、現地の方々がホッピーにどのような価値を見いだすのか見てみたい。いずれはその文化を日本に逆輸入させ、日本生まれのホッピーのストーリーをさらに多様なものにしていきたいと思っています」
ホッピーはヘルシーで味とコスパに優れ、日本の酒文化が誇るロングセラードリンクだ。ベースボールスタジアムで、ホットドッグを片手にホッピーを飲む。アメリカでそんなカルチャーが生まれる日も、いずれ来るのかもしれない。