ビーガンとミニマリスト「2世」の苦しみ、親の“信仰”の深刻な影響とは写真はイメージです Photo:PIXTA

宗教2世の人生がクローズアップされているが、選択権も与えられないまま親の信仰を押し付けられる苦労は宗教だけに限らない。親の志向がその後の子どもの人生をどう左右するのか、ビーガンとミニマリストの家庭で育った当事者たちに聞いた。(清談社 藤野ゆり)

11キロ痩せた女性が
ビーガンをやめた理由

 2019年、米国において、生後1歳半の息子に生野菜と果物しか与えず、栄養失調で死なせたとして、ビーガン(完全菜食主義者)の母親に終身刑が言い渡された。米フロリダ州の地元メディアによると、母親とその夫は肉や乳製品、卵など動物性たんぱく質を一切口にしない完全菜食主義者で、息子にも母乳以外は大人と同じメニューしか与えなかったという。いきすぎたビーガン信仰が、子どもの未来を奪ってしまった。

 ビーガンそのものを否定するわけではないが、親の強すぎる信仰心が子の人生に与える影響は大きい。昨年出産し、現在育休中のモモさん(仮名・31歳)も、ビーガン2世として育った1人だ。

「親がビーガンに目覚めたのは、2011年の東日本大震災がきっかけ。それまではごく一般的な食事をしていたのですが、震災で意識が変わったようでした。生産地を気にするようになり、だんだん食卓に並ぶものが変わって、気づけば肉や魚、卵まで禁止に。当時大学生だった私は自由に外食できたので気にしていませんでしたが、まだ高校生だった妹は親とよくけんかになっていました」

 食卓にはサラダやポトフ、果物、豆腐料理など野菜メインのメニューが並ぶようになったという。モモさん自身が親の影響を感じたのは6年前。精神的な不調で仕事を辞めて実家に身を寄せていたときだった。

「実家で親と3食を共にするようになって、その徹底ぶりに驚きました。最初は1人でファーストフードを食べたりもしていたのですが、ビーガン食で過ごした翌日は体や肌の調子が良いことに気づいたんです。両親に動物性たんぱく質の弊害を力説されると本当にその通りだと感じてきて、肉や魚を取ることに罪悪感を持つようになりました」