高原絋治
タカハラコーポレーション 社長 高原絋治(Photo by Satoru Oka/REAL)

 昨年12月、新宿・伊勢丹の床一面に緑と赤色のツリーのイラストが描かれ、買い物客の注目を集めていた。じつはその表面は、多くの人が歩いても転ばず、破けず、汚れがつきにくい、透明なシートで覆われていた。

 そのシートは、タカハラコーポレーション社長、高原絋治が開発した「ビバシート・フィルム」である。プラスティックフィルムの上に特殊な塗料を塗ることで、耐久性を高めた床材だ。取りはずしも簡単にできる。国から不燃材の指定を受けており、楽に廃棄もできる。

 タカハラコーポレーションは、名古屋市を拠点に清掃業を営むが、最近はこの床材への引き合いが増えている。2005年頃に開発を始め、08年春に本格的に販売を開始した。冒頭のようにイラスト広告や床の案内板、工場の歩行帯、さらにはヘルメットにまで用途が広がっている。毎月、500万円ほどを売り上げており、これまで500ヵ所に納入した。

 たとえば、トヨタ自動車の工場や台湾・台北市の地下鉄などに採用され、問い合わせは3000社近くに上るという。

環境が売りになる時代を先読み“使ってはがせるカーペット”を開発タカハラコーポレーション社長 高原絋治
わが社はこれで勝負!
PET材の表面に独自で開発した塗料を使い、耐久性を高めた床材「ビバシート・フィルム」。拭くだけで汚れは落ち、抗菌加工もなされ清潔だ。滑りにくく、色をつけられることから、家具の表面や車両広告などへ用途が広がっている

 その発想は、高原の環境問題への高い意識にあった。20年以上前から続けてきた、同業者らを対象にした清掃の講習会でも、こう話してきた。「普通の洗剤やワックスを使えば、汚水となって環境汚染を招く。環境に優しい清掃業者として、差別化戦略を構築しなければならない」。

 その究極が「ラップのようにはがせて、汚れにくい床」。これならば、「洗剤も使わず、掃除もいらない」のである。奇抜なアイディアは生まれたものの、事業化への道は長かった。

雪降る真夜中に
商店街シャッターたたき営業を成功させた原点

 高原は、岐阜県の中学校を卒業後、集団就職のために上京した。しかし、いっこうに仕事になじめず、全国を流浪した。「水商売など両手両足で勘定できないほど仕事を変えた」という。20歳になると、結婚を意識し「背広とネクタイを身に着ける業界に入りたい」とレジスターの製造、販売をしていた会社に就職し、営業マンとして働く。

 ノルマを果たさなければ家にも帰れない厳しい現場だった。入社して1年あまりの真冬の1月。その日もノルマを達成できず、深夜2時にマネジャーに田舎町の商店街に連れ出された。雪が降り、シャッターの下りたなかでの営業活動である。「無謀だ」と思った。だが、肩に雪を積もらせながら、見守るマネジャーの姿を見て、奮起した。

 シャッターを1軒ずつたたいて回った。罵声を浴びせられ、警察を呼ばれそうにもなった。すると、ある電器店のおかみさんが「とにかく寒いだろう、中へ入りなさい」と声をかけてくれた。そこで商品を説明し、朝5時過ぎ、契約が成立した。高原は「できないというのは言い訳だ。やる気に勝るものはない」と気づき、営業成績トップまで登りつめる。