「侍ってまだいる?」外国人のよくある疑問への回答集、インバウンドガイドが解説

海外旅行ガイドブックの決定版『地球の歩き方』から、今回紹介する記事は「訪日外国人からよく受ける質問」です。日本各地でガイドを採用・育成し、訪日外国人向けのツアーや体験を提供しているマジカルトリップ。そのツアーの最中には、日本に住んでいる私たちには、当たり前すぎて考えたこともなかったような質問が、外国人から飛び交います。今回は、マジカルトリップのガイドが「訪日外国人からよく受ける質問」とその回答例を、『今こそ学びたい日本のこと』の著者である蜂谷翔音さんが紹介します。(文/蜂谷翔音 写真/istock)

(1)『「いただきます」ってどういう意味?』

「侍ってまだいる?」外国人のよくある疑問への回答集、インバウンドガイドが解説日本人なら誰もが言う「いただきます」

 マジカルトリップのツアーでは、レストランに外国人を案内することが多いため、「いただきます」や「ご馳走さま」の説明をよく行います。日本では当たり前の光景ですが、実は「いただきます」と同じ意味をもつ外国語はなく、食前になにかを唱える文化は不思議な行為と感じられることもあります。

回答例

「いただきます」とは感謝を表す言葉で、日本人は食事をする時に周りに人がいなかったとしても呟くくらい習慣化しています。

解説・補足

「いただき / いただく」とは「もらう/食べる」の謙譲語で、「ます」もリスペクトを表す言葉です。日本人は、食事をする前に料理を作ってくれた人、運んでくれた人、食材を取ったり育てたりしてくれた人など食事に関わってくれた人、そして食材である動物や魚、野菜などの命そのものに感謝を伝えるため「いただきます」と言います。

 2300年ほど前、稲作が日本に伝えられて以来、日本ではお米中心の食文化となり、仏教伝来から明治維新までの間は肉食禁止令の影響で、魚や野菜中心の食生活をしていました。その主軸となる漁業と農業は、どちらも収穫量や出来が天候や自然に左右されるため、日本人は古くから自然との共存を目指し、お祭りや儀式では神/自然に祈りを捧げ、五穀豊穣や大漁祈願などをしてきました。太陽神である天照大神や風神雷神などの神々の種類からも、自然が神格化されていることがわかると思います。「いただきます」という自然への感謝を伝える言葉も、また神道のそういった思想が関わっているのだと思います(ちなみに仏教も多く関わっています)。