チームという視点では、全体像を分解した「共通の地図」をもつことで、全員がハッピーになるための議論ができるようになる。たとえば、リストを増やす役割を担うマーケティングチームと、成約率を上げようとするセールスチームがいたとする。共通の地図がなければ、販売個数の議論をしようとしても、「そっちが頑張れよ」とお互いに不満を抱えたまま、建設的な議論ができなくなりがちだ。しかし、共通の地図があれば、「単価を上げるほうが効率的ですよね」といった議論もできる。異なる役割を持っている部署同士でも、同じ目標に向けて建設的な議論ができるようになるのだ。

◆上手に分解するコツ
◇かけ算で分解する

 分解するときは主にかけ算を使う。それには主に3つの理由がある。

 まず、数字にすることで目標とする数値に届きやすくなるということが挙げられる。仕事上の目標は数値で表されることが多い。倍で数字が変わるかけ算は、少ない力で効率的に結果を出しやすい。

 かけ合わせることで想像しえない発想が出てくることも、かけ算で分解するメリットの一つだ。アイデア発想法では、異質なもののかけ算で斬新なアイデアを生もうとする。まだ誰も行っていないかけ算ができたときは、予想外のアイデアが生まれることがある。

 最後に、かけ算では曖昧な基準を要素分解できる。たとえば「クオリティを上げてほしい」という要望が出たとき、「クオリティ」を分解できれば、基準を明確にできる。たとえば、自社サイトのウェブデザインのクオリティが、「わかりやすさ」と「速さ」で決まっていると定義すれば、工夫すべき点が見えてくる。

◇「反対」を考える

 分解して適切な選択肢を選ぶには、枠を広げて考えたほうがよい。そのためには、思い込みをなくして思考を広げ、選択肢を増やすことだ。もっとも簡単な方法は、反対の要素を考えることだ。たとえば、「数字」と「感情」、「短期」と「長期」、「おもしろい」と「堅実」といった具合だ。あえて「反対」を考えることで、当初の考えに欠けていた視点を補うことができる。

 人は自分の考えた企画を変えたり捨てたりできないものだ。でも、「反対」を考えることならできる。反対の企画に含まれている要素を分解し、必須の要素をもとの企画に取り込めば、企画はブラッシュアップされていく。