株式投資で資産2億5000万円を築いている現役サラリーマン投資家の愛鷹氏。2008年から株式投資をはじめ、これまで通算66もの銘柄で10倍株(テンバガー)を達成。“テンバガー・ハンター”の異名をとる。2021年は9年連続テンバガー達成。会社員として働きながらテンバガーを連発する【愛鷹式】超分散投資術を徹底解説した初の単著『サラリーマン投資家が10倍株で2.5億円』(ダイヤモンド社)から、一部を抜粋・編集し、一度買ったら決算を都度確認するだけでほとんど売らない、というサラリーマンでも再現性の高い超シンプルな投資法を紹介する。

【お金を増やす】<br />仕事にも役立つ“数字の裏側”の読み解きかたイラスト:タラジロウ

「営業利益」の中身を分析

【前回】からの続き 最初は決算短信で営業利益の対前年(前期)比の増減を追うだけでも十分です。そこから、だんだんと決算短信を読むのに慣れてきたら、もう一歩進んで、その“数字の裏側”にも目を配ってみましょう。たとえば、売上高がとても伸びているのに、営業利益の伸びが相対的に弱いとしたら、企業の内部で、何が起こっていると考えたらいいでしょうか?

仮に、売上高が30%増と大幅に伸びているのに、営業利益の伸びが5%にとどまっているとしたら、その理由を考えてみるのです。売上高の伸びに、営業利益の伸びが追いつかない場合、将来的な売上高をさらに伸ばすための設備・広告の先行投資や原材料の高騰による利益圧迫などが、その原因として考えられます。前者は好材料であり、後者は悪材料です。

利益を上げる要因・下げる要因

たとえば、自社の製品やサービス、もしくは会社そのものの知名度の低さが、成長のボトルネックになっていると経営陣が判断し、テレビCMやWEB上のキャンペーンを積極的に展開したとします。すると、多額の広告費が発生しますから、売上高は伸びたとしても営業利益を押し下げる要因となります。

しかし一方で、CMやキャンペーンで知名度が上がり、投じた広告費以上に製品やサービスの売り上げが伸びれば、営業利益を上乗せできる可能性も出てきます。

「ストックビジネス」と「グリッチ」

クラウド経由でサービスを提供するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)のように、一度契約すれば継続的な収益が見込める「ストックビジネス」の場合、先々の収益を伸ばすために多額の広告費をかけて契約者数を増やし、売り上げを大幅に伸ばす経営戦略をとると、一時的に増収減益の状態になることがあります。そうなると株価の伸びも、一時的に冴えなくなります。

このように売上高は順調に伸びている半面、営業利益が一時的に減っている業績停滞状態を「グリッチ」といいます。もっとも、戦略的な先行投資によりストック型の収益を着々と積み上げられれば、投資が一巡したところで営業利益が大幅に向上することがあり、その後の株価が大きく伸びる可能性があります。

数字の裏側を分析するクセをつける

製造業の場合、原材料である原油や金属、小麦粉などが値上がりして、それを自社製品の価格に転嫁できない場合、減益の一因になります。また、感染症の蔓延で港湾職員などにも感染が拡大したことで物流が滞り、物流コストが上昇して、一時的に減益に陥ることも考えられます。

逆に、売上高は5%しか伸びていないのに、営業利益が20%も伸びていた場合、業務の内製化や自動化などのコスト削減で利益を伸ばしていることも考えられます。ただ、乾いた雑巾(ぞうきん)を絞るようなコスト削減には限界があります。そのため、売上高を伸ばすための施策をとらない限り、営業利益を底上げするのは難しくなり、業績の低迷につながる恐れもあります。

一方、利益率の高い製品やサービスの売上高が伸びたり、新たな製品やサービスがヒットしたことにより、売上高の伸び以上に大幅増益することもあります。新製品や新サービスのほうが、既存のものより利益率が高く設定されることも多いからです。こうして営業利益の数字の裏側を分析するクセをつけることは、投資家としての成長につながると私は思っています。【次回に続く】

※本稿は『サラリーマン投資家が10倍株で2.5億円』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。