世の中には真逆なことがままあるが、これもそのひとつだ。国会ではたびたび薬科大学の入学定員割れが問題視され、薬学部の定員を減らすべきだという声が上がっているが、沖縄県では逆に慢性的な薬剤師不足が叫ばれ、薬学部新設を求める声が高まっている。
少々、古いデータだが、厚生労働省が公表した18年の統計では人口10万人あたりの薬剤師数は全国平均が190.1人なのに対して沖縄県ではその7割の139.4人に過ぎない。むろん、全国最下位。いや、その2年前の16年には全国平均が181.3人なのに沖縄は134.7人で、年々、格差が広がっているのである。
この慢性的な薬剤師不足を解消するには最早、国公立大学に薬学部を設置してもらう以外に方法はない、というのが沖縄県民の悲願なのだ。実際、沖縄県薬剤師会が医師会、歯科医師会、看護師協会の協力を得て5万人を目標にした薬学部設置の署名を集めたら、たちどころに10万人を超える署名が集まったほどなのである。
何しろ、離島の多い沖縄県では、薬剤師はゼロという離島が数多く存在しているのだ。県は協議会を設置し、国公立大学の薬学部新設を模索している。