新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との共存も4年目を迎えた。ワクチンや治療薬も一通り出揃い、私たちはなんとか適応しようとしている。
一般家庭の感染対策は、換気、手指消毒、臨機応変なマスク着用と変わりはないが、もう一つ、「湿度管理」も使えそうだ。
米マサチューセッツ工科大学の研究グループは、「密」でクラスターが発生しやすい屋内の感染リスクと湿度との関連を検証した。
研究では、ワクチン接種が進む以前、つまり感染対策が限られていた2020年1~8月の世界121カ国の気象データと、同時期のCOVID-19の患者数、死亡者数を集計し、室内の湿度の推定値との関連を調べている。
この際、人間が快適と感じる温度を19~25度と仮定。室温が19度を下回ると暖房をつけて、相対的に湿度が下がる前提でシミュレーションを行った。
その結果、戸外の湿度は北半球、南半球および熱帯の国と地域に関係なく、通年で50%付近に落ち着いている一方、両半球の室内の湿度は、COVID-19の患者数や死亡者数が急増する冬季に、40%を下回っていたことが判明した。
また熱帯地域では、夏季に戸外と室内の湿度がともに上昇するが、ここでは室内の湿度が60%を超えた場合に、COVID-19の患者数と死亡者数が増加することが示唆された。
どうやら国と地域、そして戸外の気象条件にかかわらず、室内の湿度が40%を下回る、あるいは逆に60%を上回ると、新型コロナウイルスにとって「快適で生存しやすい」環境になるらしい。半面、室内の湿度が40~60%のときは、患者数、死亡者数ともに比較的少なく抑えられていた。
実際、パンデミック当初に期待された「梅雨や夏になれば流行は下火になるだろう」という観測はみごとに裏切られたわけだが、今回の研究結果は、その理由の一端を説明するかもしれない。
コロナ禍を機に、空気清浄機と加湿/除湿器を購入したご家庭も多いだろう。年間を通した湿度設定の目安として、40~60%を覚えておこう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)