おひとりさまの老後には、現役時代には見えにくい落とし穴がある! それも踏まえた、お金&老後対策は必須です。男性の3.5人に1人、女性は5.6人に1人が生涯未婚と、独身者は急増中ですが、税金や社会保険などの制度は結婚して子どもがいる人を中心に設計されており、知らずにいると独身者は損をする可能性も。独身者と家族持ちとでは、本来お金についても老後対策についても「気を付けるべきポイント」が違います。独身者がひとりで楽しく自由に生きていくためにやっておくといい50のことを税理士の板倉京氏が著した「ひとりで楽しく生きるためのお金大全」から、一部を抜粋して紹介します。

【お金の専門家が教える】「iDeCoってよくわからない」と先延ばししてる人が絶対損してる理由Photo: Adobe Stock

iDeCoは「所得控除」できる

 つみたてNISAとよく比較される「iDeCo」は自分で作る私的年金です。「iDeCo」ってよく聞くけど、いまひとつ分からないからまだやってない、という人もいるかもしれませんね。

 私たちが普段「年金」と呼んでいる公的年金(厚生年金や国民年金等)は保険料を国に払って運用を任せていますが、iDeCoは自分で年金の運用を行います。

「国の年金なんて信用できない!」と思っている人は多いと思いますが、iDeCoは、はっきり言って公的年金よりもよい仕組みだと思います。

 国に運用を任せている公的年金は制度がコロコロ変わり、もらえる金額もよくわかりません。また、早死にしてしまうと、払った保険料分の年金さえ受け取れない可能性だってあります。

 それに対して、iDeCoは自分で払った掛け金を自分の口座で運用するので、今いくらになっているのか、ということを常にネットなどで確認できますし、万が一、受け取る前に死んでしまっても、口座の中にある金額は遺族が受け取れます。しかも、つみたてNISAと同様、運用益に税金がかかりません。

 私も、10年ほど前からiDeCoで積み立てをしています。毎月2万5000円ほどを積み立てているので金額は300万円くらいですが、今の資産額は500万円以上になっています。これだけ増やすことができたのは、iDeCoも「ドルコスト平均法」で資産を運用しているからです。

 つみたてNISAと似ていますが、違いは、iDeCoは、投資した額が「所得控除」できるという点です。

iDeCoのすごい節税効果

 所得控除とは、所得税を計算する時に所得から引いてもらえる金額で、控除が増えれば税金が安くなります。私の場合は、毎年30万円ほどiDeCoへ投資していたので、年30万円が所得から控除され、その結果、年間9万円くらい税金が安くなりました。これを10年ほど続けているので、これだけで90万円の節税です。

 300万円の投資をしながら90万円もの節税ができたというわけです。これだけの節税効果があれば、万が一、運用自体がうまくいかなくても、怖くないともいえますよね。だからこそ、iDeCoをやっていない人は、本当に損してると思うのです。

「そんなにいい制度なら今すぐ始めたい!」と思った方、ちょっと待ってください。iDeCoにはいくつかの制約があります。

① 受け取れるのは、早くて60歳以降
② 掛け金に上限がある
③ 加入できるのは、基本60歳未満
④ 受け取る時に税金がかかる可能性がある

 順番に説明していきましょう。

①受け取れるのは、早くて60歳以降
 iDeCoはそもそも年金を作る制度です。そのため、受け取れるのは早くて60歳以降。若い人にはこの点が好まれないようですが、ドルコスト平均法を使った資産形成は時間をかければかけるほど有利。若いうちからできる範囲で始めるといいと思います。

②掛け金に上限がある
 iDeCoの掛け金は、サラリーマンで月額5000円~2万3000円(企業年金の有無等で異なる)、自営業者は月額5000円~6万8000円までです。

③加入できるのは、基本60歳未満
 iDeCoの積み立てができるのは、基本60歳未満です。ただしサラリーマンなど公的年金保険料を払っている人は、65歳未満まで積み立てることができます。

④受け取る時に税金がかかる可能性がある
 iDeCoは、年金として受け取ることも一括で受け取ることもできます。年金で受け取ると、公的年金等と合わせて雑所得となり、一括で受け取ると退職所得になり、受け取り方によってかかる税金等が変わるため、手取りも変わります。

 基本的には、退職所得のほうが税金も安く、社会保険料もかからないので手取りが多くなります。退職所得には退職所得控除という大きな非課税枠があり、退職金とiDeCoの合計がその範囲内なら税金はかかりません(p133参照)。非課税枠を超える場合は、iDeCoの受け取り時期をずらすことで、税金が安くなることも。

 いずれにせよ、税金はなるべく抑えたいところ。受け取り方は慎重に考えましょう。このあたりの話は、拙著「定年前後のお金の正解」にも書いています。

 *本記事は、独身者向けのお金&老後対策を書いた、板倉京著「ひとりで楽しく生きるためのお金大全」から、抜粋・編集して構成しています。