持続可能性という言葉は、家電製品から食べ物などあらゆる商品、一戸建ての住宅、暖房、電力から金融サービスに至るまで使われている。インターネット上の広告でも、この言葉が使われていない広告はほとんどない。この言葉は、ドイツ人の暮らしに完全に浸透している。持続可能性を考慮しない経済活動や消費活動は、この国ではもはや考えられない。
電力の100%を再生可能エネルギーに
ドイツ人たちは、発電事業などエネルギーのグリーン化にも力を入れている。ドイツが毎年排出するCO2のうち、石炭・褐炭・天然ガスなどの化石燃料を燃やして発電する際に排出される発電CO2の比率が、約29%と最も高いからだ。
ドイツ北部のメクレンブルク・フォアポンメルン州などを車で旅行すると、地平線の彼方に突然白い風力発電のプロペラが林立しているのに出くわすことがある。一瞬、白塗りの巨人たちが現れたような錯覚を抱く。この地域は、バルト海からの風が強く吹くので、風力発電に適している。
一方、南部バイエルン州の田園地帯を列車で通過すると、線路沿いの空き地が、太陽光発電パネルによってびっしりと覆われているのを見ることがある。この地方は北部に比べて、冬でも晴天の日が多いので、メガソーラー(大規模な太陽光発電所)の運営に向いているのだ。
ドイツの電力会社が参加している「エネルギー収支作業部会(AGEB)」の統計によると、この国の電力消費量に太陽光や風力などによる再生可能エネルギーからの電力が占める比率は、2021年末の時点で41.9%だった。1990年の再生可能エネルギーの比率は3.6%だったので、31年間で比率が11.6倍に増えたことになる。
この結果、ドイツはCO2の排出量を大幅に減らすことに成功した。経済協力開発機構(OECD)によると、ドイツは1990年からの31年間でCO2排出量を35.1%減らした。これは日本の同時期の削減率(4.7%)の約7倍である。
さらにドイツ政府は、2030年までに、電力消費に占める再生可能エネルギーの比率を80%、2035年までにほぼ100%に引き上げることを目指している。再生可能エネルギーの比率を、今後13年間で約2.4倍に増やすという野心的な計画だ。