これまで見てきたように急勾配で道路が狭いところでも整備可能なのはモノレールの利点であり、重慶はモノレールに適する都市だった。だが面白いのはその先だ。重慶市政府関係者によれば、当時の重慶市長は北九州モノレールに乗車して以来すっかり魅せられてしまい「将来はこれを重慶市の観光名物にしたい」と述べていたというのである。やはりモノレールは人を魅了するようだ。

 先述のウォルト・ディズニーもドイツ・ケルンのアルヴェーグ式実験線を何度も訪れ、試乗して魅せられていったというが、同じ頃、同様にモノレールのとりこになったのが当時、名古屋鉄道副社長を務めていた土川元夫(後に社長、会長)だった。

 土川は犬山遊園~ラインパーク間にモノレールを開業させ、続いて東京モノレール計画に参加。計89人の社員を出向させ、また東京モノレール社員の研修を受け入れている(ただし東京モノレールの経営不振で開業翌年には手を引いた)。そう考えるとモノレールの歴史の少なくない部分は、技術やコストの優位うんぬんではなく、その姿に魅了された人の思いでつながれてきたとも言えるかもしれない。

 21世紀に入ってから新規開業したモノレールは、舞浜のディズニーリゾートラインと沖縄のゆいレールのみ。それも20年前の出来事だ。だが多摩都市モノレール、大阪モノレールの延伸計画が動き出すなどモノレールの灯が消えたわけではない。

 また久方ぶりの新路線となりそうなのは、2019年に運行を終了した上野動物園モノレールの代替交通手段だ。東京都は2026年度までに「コンパクトな乗り物(小型モノレールなど)」を整備する意向で、モノレールが有力とされているが、詳細は検討中だ。

 モノレールファンの筆者としては、モノレールサミットなどの取り組みでモノレールに魅せられる人が一人でも増え、モノレールの歴史が未来に受け継がれることを願っている。

参考文献
佐藤信之『モノレールと新交通システム』グランプリ出版(2004年12月発行)
網本克己「モノレール法ができるまで」『モノレール』82号 日本モノレール協会(1994年8月発行)