最近のある市長選では、候補者全員が明石市のような子ども施策を掲げ競っていました。これまでかたくなに「予算がない」「明石市長はあのキャラだから」などと言われ、見向きもされなかった子ども施策が、実現可能な施策として公約にまで掲げられ、明石以外の他のまちでも実際に広がってきたのです。

 子ども施策、つまり市民のほうを向いた政策が公約になった理由は、そのほうが「選挙に勝てる」からです。

 市民の経済的負担が増え、子育て環境はますます厳しくなり、急速に少子化が進み、さらには虐待やネグレクトの問題も顕在化する時代です。

 切実な声はもはや、政治家が無視できない。そんな時代になりました。私が最初に市長選挙に立候補した2011年とは隔世の感があります。ようやく世間の風向きも変わってきたと感じています。

 本当はできるのに、できないと言われ続けてきました。それでも私はあきらめることなく「本気になれば、どこのまちでも、国でもできる」と訴え続けました。それがようやく証明され始めました。

明石市は選挙でまちを変えた

 トップの決断で予算配分は変えることができる。寄り添う体制をつくることもできる。もはや日本は衰退する一方だなんて、私たちの将来を悲観することはありません。冷たい社会を変えようとする政治家を選べばよいのです。

 トップが動けば、まちは変わる。本当に市民のために責務を果たす人を私たちが選べば、子どもや子育て層だけでなく、まちのみんなが幸せになっていく。まちも住民の暮らしも、実際に良い方向へと変えていけるのです。

 明石市は選挙でまちを変えました。そんな明石の軌跡を人々が知るようになり、世の中も無視できなくなったのではと感じています。少しは私の辛口トークも役には立ったのかもしれません。

 明石市の近隣自治体で若干の広がりをみせてきた子ども医療費の無料化は、全国でも広がっています。

明石市の評判を大改善した泉市長の訴え「あなたの選択が政治を変える」1963年明石市二見町生まれ。1987年東京大学教育学部卒業後、NHKディレクターに。1997年弁護士、2003年衆議院議員を経て2011年より現職。「5つの無料化」に代表される子ども施策のほか、高齢、障害者福祉などに力を入れて取り組み、市の人口、出生数、税収、基金、地域経済などの好循環を実現。人口は10年連続増を達成。柔道3段、手話検定2級、明石タコ検定初代達人。 写真:片岡杏子

 2023年からは、東京の23区も、所得制限なしで高校生までの無料化を始めることになりました。これで間違いなく周辺の自治体、多摩地区や千葉、埼玉、神奈川も追いかけてくるでしょう。首都圏でオセロが一気にひっくり返るのが見えてきました。国も間もなく動かざるを得なくなるのではと期待しています。

 国の施策になれば、他の地域でも状況は改善します。明石でも市独自の負担が減り、浮いたお金でもっと先に行くことができます。

 私たちがはっきりと意思表示すれば、私たちの暮らしは変わることが証明されつつあります。私たちのための政治に変わり、やさしいまちに変わっていくのです。