「低体重」は重大な健康リスク!6種類の心血管疾患で検証Photo:PIXTA

 コロナ禍の影響で肥満の健康リスクが注目されたが、低体重は急性の心血管疾患(CVD)で院内死リスクになるようだ。

 神戸大学の研究グループは、急性のCVDで緊急入院した人たちが治療のかいなく院内で死亡する確率と、体格指数(BMI)との関係を調べている。

 調査では、日本循環器学会の患者登録観察研究である「JROAD」に登録されている502万0464人の入院データから、初回の緊急入院患者の記録のみを抽出。20歳未満の患者や不正確な記録を除外し、最終的に急性の心不全、心筋梗塞、大動脈解離、脳梗塞、脳内出血および、くも膜下出血の6疾患について、およそ153万人分のデータから、BMIと院内死との関連を調べた。

 体重分類は、世界保健機関のアジア人に関する定義に基づき、BMI18.5未満を低体重、18.5~23未満を普通体重、23~25未満を過体重、25~30未満をI度肥満、30以上をII度肥満とした。

 解析では年齢と性別、高血圧、糖尿病など、その他のCVDリスク因子の影響を調整している。

 その結果、普通体重の院内死リスクを1とした場合、低体重の患者は6種類全てのCVDにおいて、院内死リスクが普通体重よりも有意に高いことが判明した。

 その一方で過体重~I度肥満は急性心不全、脳梗塞においては、有意に低リスクで、過体重は脳内出血のリスクも低かった。

 BMI25以上の「肥満」に注目すると急性心筋梗塞と急性大動脈解離、および脳内出血、くも膜下出血はI度、II度ともに院内死リスクであることが判明した。

 つまりBMI18.5未満の「痩せ」は、6種類全てのCVDで院内死リスクを上げる一方、肥満は心不全と脳梗塞以外の院内死リスクになるわけだ。

 また、全ての患者は高齢になるほどBMIが低下し、低体重リスクが懸念される状態だった。老親の不慮の死を避けるためには低栄養や痩せに注意をしたい。

 いずれにしても、普通~過体重が健康的な人生を全うする秘訣らしい。中高年層もほどほどのダイエットを心がけよう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)