脳梗塞になったことがある人は詐欺の被害に遭いやすい?米ラッシュ大の研究よりPhoto:PIXTA

 高齢者を狙う投資詐欺やオレオレ詐欺の被害が絶えない。

 認知症や軽度認知障害の患者が被害に遭いがちだと思われているが、実は脳梗塞の既往がある人も詐欺被害に遭いやすいらしい。

 米ラッシュ大学では、死後の献体と脳の病理検査に同意した参加者の協力で、加齢と認知機能との関連を調査している。2010年からは行動経済学の視点を取り入れ、意思決定への影響も評価し始め、今回は詐欺被害リスクとの関連を報告している。

 参加者の詐欺被害リスクについては、「知らない人からの電話にも応じなければと思うか」「電話での購入勧誘の話を聞くか」などのリスク行動に関し「強く思う」から「まったくそうは思わない」までの7段階で回答してもらい、複数回の平均スコアで評価している。

 解析対象は、試験登録から平均3・4年の追跡期間中に死亡した408人で、死亡時の平均年齢は91歳、297人が女性だった。

 死後に行われた脳の病理検査の結果をみると、154人(38%)に肉眼で見える大きさの梗塞巣があり、顕微鏡で見てわかる程度の梗塞は163人(40%)に認められた。また、肉眼で見える大きさの脳梗塞巣があった人は、動脈硬化や小さな脳梗塞を併発している頻度が2倍以上、高かった。

 さて、認知機能の影響を調整して詐欺被害リスクとの関係をみると、肉眼で見える大きさの梗塞巣があった人でのみ、リスクが高いことが判明している。梗塞巣の部位別では、10ミリメートル未満のラクナ梗塞──脳動脈から枝分かれした穿通枝(せんつうし)と呼ばれる、脳の奥の細い血管が詰まるタイプで有意にリスクが高かった。

 ラクナ梗塞は病変が小さく症状が軽い。なかには無症候性に経過し、自覚症状がないまま脳ドックの画像検査などで偶然見つかるケースもある。ラクナ梗塞の発症予防は、細い血管を詰まらせないよう血圧、血糖、脂質の管理が肝心。健康的な食事と運動の励行はいうまでもない。

 ついでに数年に1度は脳ドックを利用しておくと、怪しげな投資話に引っかからずにすむ、かも。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)